長身でマッチョの牛若丸を応援できますか? ~和製ヒーロー・ヒロイン像の条件

映画『アベンジャーズ』のロンドンプレミア。アイアンマン役のロバート・ダウニー・Jr.〔PHOTO〕gettyimages

 『アベンジャーズ』をはじめとした、アメリカン・コミック(以下アメコミ)のヒーローが活躍するブロックバスター映画(*1)が続々公開されている。映画に登場するアイアンマン、キャプテン・アメリカ、ハルクらを見て改めて実感するのが、彼らが総じてマッチョで背も高く、年齢も青年以上であることだ(アイアンマンは大企業の社長まで務めている)。また、アメリカ以外の国でも、たとえばイギリスのジェームズ・ボンド(『007』)が大人の色気を漂わせる英国紳士であるように、海外のヒーローは「タフでマッチョな大人」という印象が強い。

 一方日本のヒーローはといえば、牛若丸(源義経)、一寸法師、桃太郎、鉄腕アトム、矢吹丈(『あしたのジョー』)、孫悟空(『ドラゴンボール))、ルフィ(『ワンピース』)など、小柄ですばしっこい少年(もしくは青年)という印象が強い(*2)。国民的人気を誇る宮崎アニメの主人公も、『紅の豚』などの例外はあるが、小柄な少女であることが多い。

 こうしてみると、海外はタフでマッチョな大人、日本は少年少女と、アニメやゲームの主人公像には大きく開きがあるようだ。もちろん例外はあるものの、なぜこうした差が生じるのだろうか?

「体格差の逆転」による勝利が感動を倍増させる

 今年2月に発売され海外でもヒットした人気ゲーム『GRAVITY DAZE』のシナリオを担当した佐藤直子氏は、その理由を「日本人は若さや幼さを神聖視するが、海外はそれを経験不足で死にやすい存在と判断するから」と述べている。佐藤氏によると海外では「経験豊かな大人が世界の危機に立ち向かう」という意味での"リアリティ"が好まれる傾向にあり、制作中にも、プロジェクトメンバーのアメリカ人から「なぜ日本のゲームの主人公は少年少女ばかりなのか?」と尋ねられたという。

 佐藤氏の見方はたしかに面白い。しかし、日本のヒーロー・ヒロインに少年少女が多いのは、若さや幼さへの神聖視以上に「体格差の逆転」が日本人の感動のスイッチであることが大きいのではないだろうか。私たち日本人は、小さくて強いキャラクターが英知の限りを尽くして、体格的には自分よりはるかに大きな敵にギリギリのところで逆転勝利したときにこそ強い感動を覚えるの民族なのではないか。

*1 1億ドル以上の製作費をかけ、スター俳優と大がかりなセットをそろえた大作映画
*2 特に『ドラゴンボール』は悟空の成長後、孫悟飯という少年キャラクターが主人公扱いになり、悟飯が成長すると、再度悟空が小柄になって活躍するという徹底ぶり(?)

 歴史を振り返ってみても、ヤマトタケルはヤマタノオロチという巨大な怪物を退治して日本の"元祖ヒーロー"となった。源義経は武蔵坊弁慶との決闘がヒーローへの通過儀礼となった。太平洋戦争の敗戦後、人々が熱狂したのは力道山が巨大な外人レスラーを空手チョップでバッタバッタとなぎ倒す姿だった。なでしこジャパンをはじめ、ロンドンオリンピックの多くの日本選手の試合も、「体格差の逆転」が目立つ競技ほど、大きな感動を呼び起こしたとは言えないだろうか。

 このような「体格差の逆転」は漫画やアニメの世界でも非常に重視されている。たとえば『あしたのジョー』で原作者の梶原一騎は、力石徹を主人公矢吹丈の終生のライバルとして考えていたため、丈と同程度の体格をイメージしていた。ところが、漫画家のちばてつやは、力石を複数いる敵キャラクターの一人だと思っており、初登場シーンで力石の体を梶原のイメージより大きく描いてしまったのだという。

 日本の漫画家は潜在的に、敵キャラクターの体を大きく描きたいのではないだろうか。なぜなら、そのほうが敵が強そうに見えるからであり、敵が強そうに見えたほうが「体格差の逆転」による勝利が感動を倍増させてくれるからである。

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