造幣局、海外硬貨の製造売り込み
電子マネー普及で国内激減、リストラの危機[貨幣]

 電子マネーなどの普及で、貨幣(硬貨)の製造枚数が減少する中、財務省と独立行政法人造幣局は、アジアや中東地域の新興国の貨幣の製造受託を目指し、海外での売り込みを本格化させる。余力が生じている造幣局の製造設備を有効活用するのが狙いだ。また、造幣局は、政府の独立行政法人改革の中で業務の効率化を迫られており、海外需要の取り込みに動くのには、組織の大幅なリストラを避ける思惑もあるようだ。

 財務省と造幣局の職員による海外への売り込みは、9月から12月にかけて行う予定だ。ミャンマー、ベトナム、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートなどアジア・中東14カ国を順次訪問する。各国政府に偽造防止技術など日本の貨幣製造技術の高さをアピールし、各国の貨幣の入札情報の収集を行う。

 売り込みの対象としている14カ国は、自前の貨幣製造設備を持っていない国がほとんどだ。また、ミャンマーやベトナムなどは紙幣が中心に流通しており、アラブ首長国連邦やクウェートなどは貨幣が流通しているが、欧州などの国に製造を委託している。

 しかし、14カ国はいずれも、今後経済成長が見込まれ、貨幣の需要が拡大すると見込まれており、外国の造幣局への発注が期待できる国だ。

 海外での貨幣製造の受注は、07年にニュージーランド、12年にスリランカから、日本との友好記念の銀貨の製造を受注した実績がある。しかし、単発的な記念貨幣のため、受注量は数万枚にとどまった。

 一般に流通している貨幣では、今年7月にバングラディッシュの貨幣の入札に参加した。受注できれば、最大5億枚の貨幣を製造することになるという。流通貨幣の受注に成功すれば、まとまった量の製造が期待できるため、造幣局の工場の稼働率を高めることが期待できるという。

 造幣局は東京、大阪、広島の3工場で1円や100円など6種類の貨幣を製造する設備を持っている。ただ、「スイカ」や「エディ」など電子マネー普及で、買い物で小銭を使う機会が少なくなっており、貨幣の製造量は減少傾向にある。ピークの74年には56億1000万枚を製造したが、11年は7億3800万枚と37年間で約8分の1に落ち込んだ。

昨年43年ぶりに1円玉製造ゼロ

 1円硬貨は、記念セット用に販売するものを除いた一般流通用の製造が11年に1968年以来43年ぶりにゼロとなった。5円硬貨と50円硬貨も流通用としては10年、11年と2年連続で製造されていない。財務省幹部は「国内の製造設備や職員の製造技術を維持していくためにも、海外貨幣の製造受注を増やしたい」と説明する。

 海外売り込みのもう一つの背景には、造幣局の組織体系を存続させていくという狙いもあるようだ。民主党政権が09年に予算の無駄削減などを目的とした事業仕分けを実施した際、貨幣を製造する造幣局と紙幣を製造する国立印刷局の組織統合なども視野に入れた議論になった。

 仕分けの結論は、造幣局に対して業務の効率化や保有する不要な不動産の売却を要請することにとどめて、国立印刷局との組織統合までは求めなかった。しかし、今年1月に政府が決定した独立行政法人の制度及び組織見直しの基本方針では、造幣局は業務の効率的な執行が求められる法人である「行政執行法人」に位置付けられた。造幣局の職員数は、独法となった03年と比較すると約4分の3まで減らしているが、設備面での効率化はまだ不十分とみられている。

 ただ、貨幣の製造受注をめぐる競争は厳しいとの見方もある。カナダや英国などの造幣局もアジアや中東など海外政府に対して製造技術の売り込みを積極化させているからだ。統一通貨ユーロを採用する欧州諸国は、ユーロ導入時に製造能力を増強した反動で、現在は余剰設備を抱えている状態で、売り込みに熱心という。

 競争を勝ち抜く上で、日本の武器になりそうなのは偽造防止対策など貨幣製造の高い技術力だ。500円硬貨では韓国のウォンを使った硬貨偽造が相次いだことを受けて、00年に大量生産する貨幣では、世界で初めて貨幣の外周に「ギザギザ」を斜めに刻むことに成功している。財務省国庫課は「世界に誇れる技術で、入札においてもPRできる」としている。

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