都市政策として注目集める多文化共生
浜松市が初の「日韓欧サミット」を10月開催[共生]

日韓欧・多文化共生都市シンポジウムで「東京宣言を」を発表する鈴木康友浜松市長(中央)ら=東京都内で12年1月18日

 欧州で移民の持つ多様な力を都市政策に生かす試みが進んでいる。「インターカルチュラル・シティ」(ICC)がそれだ。そのICCと日韓の都市との連携、交流が始まった。浜松市は10月25、26日、「日韓欧多文化共生都市サミット」を同市で開催し、都市政策としての多文化共生のあり方を議論する。

 ICCは、リヨン(仏)、ダブリン(アイルランド)、コペンハーゲン(デンマーク)など21都市で、欧州評議会と欧州委員会が作成した移民受け入れのプログラムを進めている。

 欧州では移民受け入れや少数民族問題が大きな政治課題となっている。フランスは同化主義、英国、オランダなどは多文化主義で移民を受け入れてきたが、いずれも民族的なあつれきや対立が続いている。

 ICCは、そうした反省を踏まえ、移民の人権を尊重し、民族的な差別を許さない立場からさまざまな社会統合政策を進めている。従来の考えと大きく違うのは、移民の多様性を肯定的に資源としてとらえ、受け入れ国側住民との交流を促進していることだ。欧州ではICCが「移民受け入れの最終型」とも言われている。

 コペンハーゲンでは、言語や習慣などの違いから労働市場に参加しにくい移民の起業家を支援している。イタリアのレッジョ・エミリアでは紛争の拡大を防ぐ人材を育成する研修に取り組んでいる。

 また、ICCの取り組みを相互に視察し、各種セミナーも開催。さらには都市ごとのプログラムの実施状況の評価を行うなど、戦略的な対応を展開している。

 移民政策をとらない日本では「専門的技術的分野の外国人は受け入れるものの、単純労働者は受け入れない」というのが基本方針。このため政府の取り組みが遅れ、在日外国人の社会統合政策は、地方自治体が担っているのが実情だ。

 特に問題が表面化しているのは、製造現場で働く日系人。家族を母国から呼び寄せるケースが増え、子どもの不就学はじめ、医療、福祉などの分野でも制度の谷間に置かれることが少なくない。

 日系人が多く住む都市でつくる外国人集住都市会議が01年に発足した。当初の13都市が29都市に増え、毎年、参加都市が一堂に会して政府への要望をまとめているが、要望事項は外国人の生活支援が中心だ。

 外国人といえば、「他人の迷惑を考えない」「ゴミ出しのルールを守らない」などと行政に苦情が持ち込まれることが少なくない。

 ICCプログラムは、日本の自治体のこうした見方に対し発想の転換を迫っている。実際には日系人の働きによって地域経済が活性化したり、彼らとの交流を通じて「国際化」が進んだケースもあり、異文化さまざまな形で日本人に刺激を与えている。

 ICCを日本に紹介したのは、外務省の外郭団体の国際交流基金だ。基金は09年からICCの取り組みを視察し、その報告会を開いたほか、昨年8月には韓国・ソウルで韓国の多文化都市を招いてシンポジウムを開いた。

 今年1月には東京都内でICCの3都市を招いて「日韓欧・多文化共生都市サミット」を開催した。欧州評議会幹部のほか、欧州からはICCのポルトガルのリスボン市、イタリアのレッジョ・エミリア市、スウェーデンのポットシルカ市、韓国からはソウル市西大門区、水原市、安山市、日本からは浜松市と新宿、大田両区のそれぞれの首長らが参加した。

 韓国は日本以上に少子化が進んでいる。外国人労働者のほか、農村部では外国人花嫁が急増し、韓国政府は外国人受入れの法整備や韓国語教育などに積極的に取り組んでいる。日韓の都市が共通の課題を抱え、互いの取り組みに関心を寄せる。韓国では1月のサミットをきっかけに、日本の外国人集住都市会議にならって多文化都市のネットワークづくりが進められている。

 1月のサミットでは「東京宣言」が発表され、この中で10月に浜松市で同市が主催者になって多文化共生都市サミットを開催することがうたわれた。日韓欧の都市サミットは、日本の外国人政策に新たな流れを作ると期待されている。

◇  ◇ ◇

異文化交流から新たな価値を生む
鈴木康友浜松市長にICCについて聞いた。

――欧州のICCの取り組みについて。

鈴木市長 浜松市は日系の方など外国人が多く住んでいますが、これまではどう共生するか、いろいろな問題にどう対処していくのか、というスタンスでした。いつまでもそれではダメだと。ICCの発想じゃないけれど、都市の活性化や活力に結び付けていきたいですね。これからは産業面でも文化の面でも、外国人の能力や活力を生かせるよう、取り組んでいきたい。

――外国人は地域に貢献している面もあります。

鈴木市長 そうですね。浜松の基幹産業を外国人が支えてきたのは紛れもない事実です。労働力の補完ということでいまも貢献してもらっていますが、それ以外の力を引き出せなないか。いまは文化的な取り組みもしていますから、異文化との交流の中で今後、新たな価値を生み出していくような取り組みができないか。

――外国人とともに高齢者や女性の能力も重視した多様性のある社会が求められます。

鈴木市長 「市民協働で築く、未来へかがやく創造都市・浜松」という都市ビジョンを打ち出していますが、「市民協働」とはそういうことだと思います。その多様性を市民の活動や企業の活動に生かしていく。いま、音楽の分野でユネスコの「創造都市」に加盟申請をしています。音楽産業をベースに新しい文化的価値の創造を市民が主体となった活動によって実現していきたい。

――外国人集住都市会議の参加都市にICCの取り組みを広げていく考えは。

鈴木市長 外国人集住都市会議の設立時に「浜松宣言」を採択しました。この中にICCの考えと共通する理念がうたわれています。しかし、これまでは、対症療法的に外国人支援を中心とした取り組みが行われてきました。今後は欧州のICCとも連携し、他の集住都市とともに多様性を生かしたまちづくりを実践していきたい。

――ICCや韓国の多文化都市との協力・連携は。

鈴木市長 グローバル時代において、誰もが住みよい地域づくりを行い、いかに多様性を都市の活力の源泉として生かせるかが、持続可能な都市の発展のカギを握る。10月に浜松市で開催する「日韓欧多文化共生都市サミット2012浜松」を通じ、日韓欧の都市間連携を促進するとともに、本市が加盟している世界最大の地方自治体の連合組織である都市・自治体連合(UCLG)のネットワークも活用し、とりわけアジア地域の会員都市との連携を促進し、知見や経験を共有してよりよい政策を実施していきたい。

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