着々と進む普天間のオスプレイ配備
安全性の疑問残しながら、10月初旬の本格運用目指す[在日米軍]

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備計画が着々と進んでいる。10月初旬に本格運用が始まり、全国の主に6ルートでも低空飛行訓練が実施される見通しだ。だが、相次ぐ墜落事故で沖縄県をはじめ各自治体の懸念は根強い。オスプレイの配備問題は民間出身で政治経験のない森本敏防衛相に重くのしかかっている。

 米海兵隊は普天間飛行場の老朽化した輸送ヘリCH46(24機)を同数のオスプレイと入れ替える計画だ。米政府は6月29日、日本政府にこの配備計画を正式通告した。これを受け、民間貨物船に積載したオスプレイ12機が7月23日、米軍岩国基地(山口県岩国市)に搬入された。10月初旬に普天間で本格運用を開始し、来年夏には残り12機を配備する予定だ。

 米海兵隊は世界規模でCH46をオスプレイと入れ替える過程にあり、計360機を調達する予定。うち約140機を既に米本土に配備し、イラク戦争やアフガニスタン戦争で実戦投入した実績がある。CH46と比べ速度約2倍、搭載量約3倍、行動半径約4倍と高い能力を誇り、普天間に配備されれば南西諸島をすべてカバーできる。日本政府には海洋進出を強める中国を念頭に「海兵隊の能力が格段に向上する」(森本防衛相)と抑止力アップへの期待があり、アジア太平洋を重視する新国防戦略を掲げる米国も普天間配備を重視している。

 だが、オスプレイには安全性への懸念が付きまとう。開発段階の91~00年、4回の墜落事故を起こして計30人が死亡し、「ウィドーメーカー(未亡人製造機)」と不名誉な異名を取ったほどだ。改良が重ねられた結果、米政府は05年に「すべての信頼性や安全性基準を満たす」として量産を承認したが、今年だけで4月にモロッコ、6月に米フロリダ州で訓練中に墜落事故が相次ぎ、再び「安全性」が大きく揺らいだ。

 米国防総省によると、死者や200万ドル以上の損害が出た「クラスA」の事故率(10万飛行時間当たりの件数)は1・93と海兵隊航空機の平均2・45を下回っている。しかし、比較的損害が小さいクラスBでは2・85(平均2・07)、クラスCでは10・46(平均4・58)といずれも平均より高いのが実態だ。米国防分析研究所の元分析官、レックス・リボロ氏は「戦闘任務では事故が続くだろう」と予測する。

 国防総省はクラスAの事故率を根拠に安全性をアピールしているが、沖縄県の不信感は根強い。仲井真弘多知事は、市街地が広がる普天間周辺で事故が起きれば「全基地即時閉鎖という動きに行かざるを得なくなる」として配備に激しく反対している。

 しかし、日本政府にはオスプレイ配備を拒否する権限がない。在日米軍が日本を防衛するため必要な装備を配備することは日米安全保障条約の前提とされる。装備の「重要な変更」は例外として日米間の交換公文で「事前協議」の対象とされているが、オスプレイは該当しないとの見解だからだ。

 日米両政府は沖縄県の反発を和らげるため、普天間配備に先立ち、米軍岩国基地(山口県岩国市)で試験飛行を実施することで合意している。日本政府は普天間飛行場移設のための沖縄県名護市辺野古の公有水面埋め立て許可申請を今後に控えていることもあり、沖縄県とのこれ以上の関係悪化は避けたいとの思惑がある。

 試験飛行は日本側が米側のモロッコ、フロリダの事故調査結果をもとに飛行運用の安全性を確認してから実施される。政府は自衛隊ヘリのパイロット、国土交通省幹部、外部有識者らによる安全性分析評価チームを発足させたが、独自調査ができるわけではなく、米側の結果を追認するにとどまる見通しだ。両政府に本格運用の開始時期を変更する考えはなく、「配備ありき」との批判が高まるのは必至だ。

全国6ルートで低空飛行訓練

 試験飛行にこぎつけてもなお難題は残る。オスプレイは沖縄で運用されるだけでなく、東北、四国、九州の山岳地帯などに設定されている主に6ルートで低空飛行訓練が計画されている。米政府による環境審査の報告書によると、最低で地上約150メートルと東京タワー(高さ約330メートル)の半分に満たない低高度を飛行する予定で、各ルート周辺の自治体から懸念や反対の声が相次いでいるのだ。

 これについても、日本政府には中止させる権限がない。政府は米軍が飛行訓練などの活動を行うことも日米安保条約の前提とされ、施設・区域以外の上空で行うことも認められるとの立場を取っているためだ。ただ、低空飛行訓練を巡っては99年に日米合同委員会で、▽人口密集地域や学校・病院などへの妥当な考慮▽航空法などの最低高度基準(原則地上150メートル)の尊重――などで合意している。

 ただ、防衛省に寄せられる米軍機の低空飛行訓練に関する苦情は年間約200~300件と絶えず、合意が守られていない疑いも指摘されている。日本側は米側に配慮を要請するしかないのが現実だ。

 米国内ではオスプレイの訓練計画が変更された例もある。6月にはニューメキシコ州で、環境影響評価(アセスメント)での住民意見を受けて低空飛行訓練の延期が決定。8月にはハワイ州でも着陸訓練計画が中止になった。米政府は日本での訓練についても環境審査を実施したが住民意見を募る手続きは定められていない。民意を反映する機会はなく、米国内の対応とは対照的だ。

 日本政府は在日米軍との間でオスプレイの運用ルールを作りたい考えで、日米合同委で協議を続けている。モロッコ、フロリダの事故ともプロペラの向きを前方に傾けている際に発生したことを受け、市街地の上空ではプロペラの向きを転換しないなどの措置を決められるかが焦点だ。

 森本防衛相は6月の就任直後にフロリダの事故が発生して以降、オスプレイ配備問題にかかりきりだが、政治家でない弱点がじわじわと表面化してきている。民主党内に基盤がないため、配備計画の進め方を巡って前原誠司政調会長らと対立するなど党内の合意形成につまずいた。8月の訪米でオスプレイに試乗した際は「大変快適だった」と不用意な発言をして沖縄などの反発を買い、「政治家だったらあり得ない発言だ」と野党から批判が起きた。政治的センスが必要なオスプレイ配備問題に苦しめられる日々が退任まで続く可能性は捨てきれない。

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