賢者の知恵
2012年09月13日(木) 週刊現代

ハーバード大学 イチロー・カワチ教授の調査結果を特別公開 日本人はなぜ長生きなのか---3万人の調査でわかったこと

週刊現代
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「平均寿命世界一」。長年栄誉ある称号を受けながら、我々は自分の命について何も知らなかった。ハーバード大学最新の調査によって今、寿命のメカニズムと、さらなる長寿への可能性が明らかになる。

世界で16年間の大規模調査

 日本人の寿命はなぜ世界一長いのか。これまで考えられてきた主な理由は3つあります。遺伝子、生活習慣、そして国民皆保険に代表される優れた保険医療制度です。しかし、これらだけでは長寿の理由が十分に説明できないということが、近年の社会疫学の研究で明らかになりました。

 こう語るのは、ハーバード大学公衆衛生大学院健康社会行動学〝疫学講座のイチロー〟カワチ教授(50歳)だ。ニュージーランドのオタゴ大学医学部を卒業後、同国で内科の臨床医を勤めた。その後、ハーバード大学に移り、社会疫学の研究を精力的に進めている。日本人の寿命のメカニズムに迫るソーシャル・キャピタル調査に監修者としてかかわり続けるカワチ教授が、その最新データを明かしてくれた。

 日本人の長寿は遺伝子に関係しているという通説を覆したのは、'70年に行われた日本人移民の追跡調査でした。日本に住んでいる人とホノルル、サンフランシスコに移住した人たちの病気の統計を取った結果、後者にいくほど心臓病にかかる確率が高まることがわかりました。同じ遺伝子を持つなら、暮らす場所で健康状態が変わるのはおかしいはずです。日本人が長生きなのは、食生活などの生活習慣の違いが影響しているのではないか、と考えている人も大勢います。

 確かに、世界的にみても体にいいと言われている日本食ですが、実は塩分や炭水化物がかなり多く含まれているため、とりわけ優れているとは考えにくい。医療面でも、アメリカは日本と比べて個人の医療分野への支出が3倍になりますが、平均寿命は日本の方が4・2歳も長いのです。確かに保険医療制度は国民の健康を守るには大事な制度ですが、長寿の決定的要因であるとは断定できないのです。

 寿命を左右する本当の要因は何なのか。我々ハーバード大学の社会疫学研究者たちが'96年から、アメリカや日本など世界の国と地域を対象に行った大規模な調査の結果、日本文化の中にある強い「ソーシャル・キャピタル」が、長寿と健康に大きく関係しているということが分かりました。

 ソーシャル・キャピタルとは、「お互いさま」や「持ちつ持たれつ」といった連帯意識のことです。ソーシャル・キャピタルの測定方法は、アンケート方式です。「あなたの地域の人は信頼できますか」、「地域の人と助け合いができていますか」、「地域の人はあなたの弱みに付け込んできますか」などの周囲との人間関係に関する要素を含んだ質問をし、「非常にそう思う」、「ややそう思う」、「どちらとも言えない」、「あまりそう思わない」、「まったくそう思わない」の5段階で回答してもらいます。そして、その調査対象者たちを数年間追跡し、どんな人が病気になったか、誰が生存しているかを確認するのです。

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