「泰山鼓動ねずみゼロ匹」の細野不出馬で野田首相の首がつながり、自民党総裁選挙の行方は混沌としてきた
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 9月21日実施の民主党代表選は、細野豪志原子力事故担当・環境相の"出馬騒ぎ"で様相が一変するかに見えた---。6日付各新聞(朝刊)が「細野氏、出馬の意向」(『読売新聞』)、「細野氏、出馬を検討」、「細野氏、代表選出馬へ」(『産経新聞』)と大々的に報じたことで野田佳彦首相の再選に黄色信号が点滅したのだ。細野氏出馬となれば、党内中間派の鹿野(道彦前農水相)グループを筆頭に菅(前首相)グループや鳩山(由紀夫元首相)グループが雪崩を打って細野支持に回る可能性があった。

 ところが、この「細野首相・代表」誕生の可能性は一夜にして潰えた。翌7日朝刊で『朝日』が一転して「細野氏、出馬見送る方向」と報じた。同紙報道は裏取りしたスクープであった。まさに「大山鳴動ねずみ0匹」の騒ぎに終わったのだ。野田首相の「ツキ」も実力のうちかと言えるかも知れない。

野田首相、極秘裏にナベツネと会談

 先ずは、こうした政局展開に至った過程を検証してみたい。8月31日夜、ナンバープレートに「1000」の数字が刻まれたメルセデス・ベンツが永田町・内閣府前の首相官邸通用口から邸内に入った。後部座席に乗っていたのは、「ナベツネ」こと読売新聞グループ本社の渡邉恒雄会長兼主筆であった。

 野田首相と極秘裏に会談するため公邸を訪れたのだ。酒食を共にした野田・渡邉会談は2時間半に及んだという。マスコミが一切報じていない同会談で、2人はいったい何を話したのか。

 自民党(谷垣禎一総裁)はその2日前、国民の生活が第一(小沢一郎代表)、みんなの党(渡辺喜美代表)など中小野党7会派が提出し首相問責決議案の修正案に同調、同修正決議案は参院本会議で採決・可決された。「総裁一任」を取り付けた谷垣氏は、自民党が6月15日の民・自・公3党合意に基づき8月8日の参院本会議で消費増税関連法案に賛成したにも拘わらず、3党合意を事実上否定する内容の首相問責決議案を受け入れたのだ。

 まさに「理に適わない」この決断について、自民党内の首相経験者や派閥領袖など長老クラスから「谷垣は下手を打った」と酷評され、9月26日の総裁選で再選を目指す谷垣氏は現在、出馬そのものが危うくなったと言われるほど厳しい局面に立たされている。

 逆に、野田首相は谷垣氏の「ドジ」に救われたと言える。即ち、首相問責決議案可決によって野田氏は、(1)代表選再選後の役員人事・内閣改造、(2)秋の臨時国会中の20012年度補正予算策定、(3)臨時国会召集と同時に13年度予算編成着手―という3つのカードを手にしたことになるからだ。(2)と(3)は公明党懐柔に有効な武器となる。

 こうした当面の政局展開と秋の臨時国会運営、さらには注目の衆院解散・総選挙の時期について、野田首相は「マスコミ界のドン」渡邉氏からの助言を含め、意見交換を行なったとみられる。渡邉氏が今通常国会の焦点だった消費増税関連法案成立の過程で野田官邸と財務省(当時は勝栄二郎財務事務次官)との調整で大きな役割を果たしたことは周知の通りである。

 野田氏は渡邉氏に対し、10月初・中旬召集予定の臨時国会で12年度補正予算を策定すると同時に、衆院定数削減関連法案(「0増5減」法案)と赤字国債発行に必要な特例公債法案を成立させたうえで13年度予算編成も自らが手掛けたいとの意向を示し、理解を求めたというのである。正直言って、渡邉氏がどのような反応を示したか、は分からない。

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