大本営発表に依存する大新聞が報じない野田内閣「原発ゼロとする場合の課題」ペーパーの噴飯内容を分析する
〔PHOTO〕gettyimages

 野田佳彦内閣は週明けの9月10日、エネルギー・環境会議を開いて、将来のエネルギー選択を決める予定だ。これまでに2030年の原発依存度をゼロにする、15%にする、20~25%にする、という3つの選択肢が示されている。

 経済産業省など政府内の原発推進勢力が当初、15%案での決着を狙っていたのは間違いない。20~25%案だと原発の新増設が避けられず、ハードルが高すぎる。といって、ゼロ案も過激すぎる。そこで中間の15%案を落としどころにする思惑が見え見えだった。それでも当然、原発再稼働が前提になっており、事実上の現状維持路線だ。これなら核燃料サイクルも維持できる。

 ところが、首相官邸前の抗議行動に象徴されるような反原発世論の高まりや衆院解散・総選挙への悪影響などを恐れたためか、3つの選択肢を公表した後になってから、ゼロ案を真面目に検討せざるをえなくなった。

 野田首相はゼロ案を採用した場合の問題点を詰めるように関係閣僚に指示した。その結果「エネルギー・環境戦略策定に当たっての検討事項について」というペーパーがエネルギー・環境会議に提出されたのが9月4日だ。いかにも泥縄式だ。

 その中に「原発ゼロとする場合の課題」という8枚紙の資料がある。読売新聞や産経新聞、日本経済新聞などはこの資料をネタ元にして、これでもか、という具合に社説や記事で原発推進の旗を振っている。ほとんど丸写しのような記事をみると「新聞は大本営発表だ」と世間で批判されていることなど、まったく意に介していないかのようだ。

 マスコミの問題点はもちろんあるが、それは措いて、ここでは資料の中身をチェックしよう。

「即時ゼロ」の状態はリスクではなく「政策の可能性」だ

 ペーパーは「まず向き合わなければならない課題」として「使用済み核燃料の扱い」と「再稼働への影響」を指摘して「関係自治体の理解と協力が得られなければ『即時ゼロ』となりうるリスクをどう乗り越えるか」という論点1を最初に掲げた。

 そもそも政府の選択肢に「即時ゼロ」案が入っていないこと自体がおかしい。なぜなら、この夏は原発ゼロでも乗り切れたからだ。それは大阪府市・エネルギー戦略会議に提出された関西電力の資料などであきらかである。

 この資料(8月23日付)によれば「関電が節電要請した時点で7、8月の供給力見通しは2500万kW程度だったが、大飯原発3、4号機の再稼働や出水に恵まれた水力の増加などで追加供給力は最大500万kWを確保した」と小さな字で書かれている。つまり確保した供給力は合計3000万kWである。

 これに対して、実際に消費した電力はといえば「現時点で最大電力は8月3日の2682万kWであり、安定した需給状況を確保できています」とある。大飯3、4号機の発電量は計236万kWである。つまり、原発稼働で確保できた多少の揚水発電分を割り引いても、大飯の再稼働分は必要なかった。

 加えて、エネルギー戦略会議に提出された別の資料によれば、西日本6電力で合計1000万kW前後の余裕があった。これを各社でやりくりすれば十分、間に合ったのだ。

 政府のペーパーはいまだに「原発ゼロなら電力需給ひっ迫」と強調している。だが、それは今夏の実績でひっくり返された。にもかかわらず「即時ゼロ」の状態を「リスク」ととらえている。リスクではなく、実績を踏まえて将来の選択肢となりうる「政策の可能性」ではないか。最初から問題のとらえ方が倒錯しているのだ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら