サッカー
二宮寿朗「川口能活、新たなストーリーへの準備」

 川口能活、37歳、復活を期す秋――。

 今年3月、練習中に右アキレス腱を断裂する大ケガに見舞われ、全治6カ月と診断されてから間もなく半年を迎えようとしている。ジュビロ磐田が上位争いに食い込むなか、守護神は来たるべき復帰の時に向け、ピッチを上げて準備を進めている。

奇跡の復活を果たした理由

 7月末、必死にリハビリに励んでいた川口に話を聞く機会があった。

 アキレス腱断裂は、史上8人目となるJ1通算400試合出場を果たした5日後に起こったアクシデントだった。ケガの直後はショックがあまりに大きく、気持ちを建て直すまでにある程度の時間が必要だったという。

「いいシーズンを送れるんじゃないかと思った矢先にアキレス腱をやってしまったので、正直ちょっと(精神的には)きつかった。でも沈んではいられないし、気持ち的に吹っ切れてからはここまでそんなに長くは感じなかったですね。今は焦らずにやっています」

 不屈の人には、奇跡がよく似合う。

 忘れられないのが2010年の南アフリカW杯での本大会メンバー入りだ。右脛骨骨幹部骨折という全治6カ月の大ケガを乗り越えてメンバー発表前に実戦復帰し、岡田武史監督から直々に要請を受けて衝撃的な代表復帰を果たしたわけである。

「第3GK」としての選出で本大会では出場機会に恵まれなかったものの、最年長者が黙々とトレーニングに励む姿は、チームに一体感を呼び込んだ。チームキャプテンの存在はあまりに大きかった。

 W杯後はチームに戻って好パフォーマンスを続け、11年に入っても好調を持続させていた。これを可能にした理由は、肉体的なリハビリだけでなく、試合勘を鈍らせないようにイメージトレーニングをしっかりと積んできたからに他ならない。

 リハビリのときに何を自分に積み上げるか――。奇跡のメンバー入りもさることながら、その後の“巻き返し”こそが称賛に値すると個人的には思っている。

 ケガを乗り越えてメンタルの強さには磨きがかっている。今回もリハビリの期間を有効に使う姿があった。

 川口はこう言う。
「試合を離れて見た時に気づくこともあるんです。若い選手はやはりスキルのほうに目が向きがちですが、キャリアを重ねてくるとGKとして周りを安心させるというか、空気をどうやってつくるかに意識が向いてくる。それが自分のなかで少しずつ見えてきていて、復帰したらこういうふうに体現してみようとか思いながらいろんな試合を見ている。相手からしたら何か嫌だなと思われるようなプレーだったり、振る舞いだったり、そういった心理戦の駆け引きのところも大事にしていきたい」