「安くて安全」な原子力村の次は「クリーンで安全」な「再生村」が誕生!デタラメな国民負担を許さないために、原発ゼロに向けた電源構成を監視しよう!

 原子力発電所の存続を目論んでいた世論調査の結果がアテ外れだったことを受けて、政府・民主党では、にわかに原発ゼロを目指すかのような動きが目立っている。

 だが、安堵するのは早計だ。むしろ、新たな電源構成が官僚主導の利益誘導型で決まり、コストが高騰するリスクが一段と高まっているからだ。

 今週は、重い国民負担を生む勢力として、高くて危険な原子力を「安くて安全」と言い続けてきた「原子力村」だけでなくて、太陽光や風力などの高くて不安定な再生可能エネルギーを「クリーンで安心」と言い張る「再生村」が新たに誕生しつつあることに目を向けてみたい。その片鱗は政府の公式資料からも読み取れるのだ。

 まず、ご覧いただきたいのが、ここに要点を抜粋して掲載した表「シナリオごとの2030年の姿」だ。これこそ、政府が今夏、鳴り物入りで世論調査を実施した原発を巡る「3つの選択肢」の原典である。

シナリオごとの2030年の姿(総括)(括弧内の数値は2010年比)
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 それによると、3つのシナリオはすべて、原発依存度の低下分を、再生可能エネルギーと省エネで賄うことが基本になっている。

 これに対して、化石エネルギーは漸減か横ばいと抑制されている。特に、現在、全体の24%を占めている「石炭火力」発電への依存度は、3つのシナリオのどれをみても引き下げる計画であることを覚えておいていただきたい。

 次にご覧いただきたいのが、次ページのグラフ「主な電源の発電コスト」だ。こちらも、政府の「エネルギー・環境会議」の「コスト検証委員会」が昨年12月にまとめたものである。

 様々な電源の2004年、2010年、2030年の予測コストが網羅されており大変興味深いのだが、ここでも、まず「石炭火力」発電に着目して頂きたい。上限を見た場合、10.3円/kwhと2030年の予測コストが最も安いのが「石炭火力」発電なのだ。これは、石炭がLNGや石油と同じように資源を輸入に依存しなければならないものの、世界的に見ればその埋蔵量が圧倒的に豊富であり長期間にわたって安定的に廉価で確保できる見通しにあることを示している。

主な電源の発電コスト
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 そもそも、技術革新や投資動向次第で大きく発電コストが振れる風力、小水力、バイオマス、太陽光などの発電と比べても、これらの上限コストが17.3~32.2円/kwhと割高なことを勘案すれば、石炭火力の価格安定性が抜きんでていることがわかるはずだ。

 ちなみに、原子力は下限のコストこそ8.9円/kwhと安いが、これは、他の政府の試算同様、福島原発事故の損害額を現時点までに確定できた5兆8318億円にとどまるとの前提で試算したもので、まったく参考にならない予測であることを付言しておく。

 その一方で、再生可能エネルギーの中では、地熱発電の予測コストが9.2~11.8円とダントツで安定的なことも重要なポイントだ。

石炭火力の汚いというイメージはもはや過去のもの

 以上のポイントを踏まえたうえで、冒頭で紹介した表「シナリオごとの2030年の姿」をもう一度見てみよう。

 石炭火力発電は、コストが最も安いと見込まれるのだから、その依存度を引き上げるべきであるにもかかわらず、実際には現行の24%から21%(原発ゼロシナリオ、追加対策後の姿)に引き下げる計画になっているのだ。

 表向きの理由は、石炭火力発電は硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじんなどを発生し環境に及ぼす影響が大きいうえ、CO2を多く排出するので地球温暖化防止の観点からむやみに増やすわけにはいかないというものだ。

 しかし、石炭火力に付きまとう、こうした汚いというイメージがもはや過去のものであり、依存度を引き上げないためのまともな理由とは考えにくい。

 というのは、この分野の技術革新は目覚ましく、例えば、硫黄酸化物の場合、すでに2000年代後半の段階で、日本の石炭火力発電における排出は、米国、カナダ、フランスなどの15分の1から17分の1程度、ドイツ、イタリアの4分の1程度というドラスティックな削減を実現しているからだ。

 CO2の排出についても、蒸気タービンの圧力や燃焼の温度を「超々臨界圧」と呼ばれる極限まで上昇させる方法が実用化しており、仮に、この技術を米国、中国、インドに移転できれば、日本1カ国分のCO2の排出を削減することが可能とされている。

 さらに、石炭をガス化してLNGと同等の燃焼効率を確保する技術もほぼ実用化段階を迎えつつあるのだ。

 こうした技術は、国内の電力コストの抑制と環境保護を両立するばかりか、新たな日本の主要輸出産品にもなり得ると期待されている。

 それにもかかわらず、なぜ、民主党政権は、石炭火力発電の依存度を引き上げようとしないのか。答えは明らかだ。振興を求める強力なロビイング勢力が存在しないからである。

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