経済の死角

日本一のテレビメーカーが中国・韓国・台湾の喰い物にされた シャープ元副社長の「遺言」「いまの経営陣は会社のことより
自分のことを考えている」

2012年09月03日(月) 週刊現代
週刊現代
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 ついに主力行が2000億円超の追加融資を検討する事態になった。リストラ策で急場を凌ぐしかないシャープに、未来はあるのか。元幹部が本誌の独占インタビューに応じ、すべてを語った。

オンリーワンはダメな考え

 シャープ創業者の早川徳次さんが亡くなる間際、私は病床に呼ばれました。

「相手に真似されるような技術をどんどん作ってちょうだい」

 それが僕が聞いた早川さんの遺言です。

 シャープは鉱石ラジオを日本で最初に発売した会社です。テレビも電子レンジも他社に先駆けて世に出した。でも、しばらくすると圧倒的な販売力を持つ松下電器(現・パナソニック)に追い抜かれてしまう。

 早川さんは悔しがっていたけれど、松下の後を追うことはしませんでした。

「真似されてもいい。真似されても、次々とライバルが真似したがる新商品を出していけばいい」

 そう考えていました。それこそが当時のシャープの哲学だったんです。

 だからいま、中国や韓国の企業に技術を真似されていますけど、本当ならそのことを喜ばなきゃいかんのです。その代わり、真似された方が死んだらあかん。トカゲの尻尾みたいに、切っても切っても後から新技術が出てくるような研究開発体制をとらないとね。

 ところがあるころからシャープは液晶のヒットに気をよくして、「オンリーワン」という考え方を口にするようになりました。これは早川さんの「モノ真似されるような技術を作れ」という考え方と矛盾する。だって、オンリーワンの技術が一番いいんだと言うわけでしょう。本当なら「もっといいモノをまた作らにゃいかん」と考えなきゃいかん。世の中は変化していくんだから、オンリーワンにいつまでも固執しちゃいかんのです。早川さんの思想がいつのまにか消えてしまったんですね。シャープの経営がおかしくなり始めたのは、その頃からです。

 いまシャープの命運は、出資を受けることになっている鴻海との関係がどうなるかにかかっています。ただ、鴻海との提携はかなり注意してやらないと危ないと見ています。

 液晶の売り上げに依存する一本足打法があだとなって経営危機に陥ったシャープは今年3月、台湾の大手企業・鴻海精密工業との資本・業務提携を発表。資金繰りに目途をつけるはずだったが、シャープの株価下落が止まらないことから提携条件の見直しに入っている。主力行による追加融資が検討されるほど資金繰りに窮する中、市場では「シャープが鴻海に喰われる」との懸念の声も出ている。

 シャープの電卓開発を指揮し、同社が世界有数のエレクトロニクスメーカーに成長する技術的基盤を築いた佐々木正氏(97歳)。若き日の孫正義氏に目をかけ、起業資金として銀行から1億円を借りる際の保証人になったことでも知られ、日本の電子産業史を語る上で欠くことのできない大立て者である。その佐々木氏の目に現在のシャープの苦境はどう映っているのか。

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