官々愕々
「脱原発依存」に潜む官僚マジック

 野田佳彦首相は22日午後、市民団体「首都圏反原発連合」の代表者11人と首相官邸で面会した。大飯原発の再稼働即時停止などを求めた市民団体側に対して、首相は、「政府の基本的な方針は脱原発依存だ」と答えた。最近野田総理が多用する「脱原発依存」という言葉。これは官僚が作ったものだ。

 原発をゼロにするなら、「脱原発」で済む。後ろに「依存」という文言をつけると意味が変わるのか。普通の人から見れば同じに見える。しかし、官僚が、3文字で済むところにわざわざ2文字追加するのだから、そこに意味がないはずはない。「依存」の意味は何なのか?

 官僚の理屈はこうである。日本語の意味としては、「依存」は「あるものに頼る」ことである。原発の比率がゼロであれば頼っていないから、依存していないと言える。では、原発比率1%だったら、どうか。残り99%が原発でないのだから、原発に頼ってはいない。10%なら、「たった」1割だからと言い換えて、頼っているとはいえないだろう、と言う。さらに、11%なら、12%ならというように考える。15%くらいまでならぎりぎり頼っている訳ではないと言えそうだ、というのが狙いだ。確かにそういう順序で話されると、そうかもしれないということになってくるから恐ろしい。

 今議論している、2030年の原発比率の3シナリオ、すなわち、ゼロ、15%、20~25%のうち15%のシナリオが、政府が元々狙っていたシナリオだ。つまり、そこを目指すのが、「脱原発依存」という言い回しだと言って良い。原発ゼロを意味する「脱原発」とは全く意味が違うのである。

 政府は、40年経った原子炉を廃炉にして行くことを忠実に実施すると、2030年には原発比率が15%になるとしているが、実際には、15%シナリオ実現には、新たに原発を2基ほど新設しなければならないという事情が隠されている。そして、官僚は考える。「1基新設できれば、あとは芋づる式に増やして行けばいい」と。

 このように、官僚は「脱原発『依存』」で何とか逃げようとしていたのだが、官邸前のデモなどでかなり追いつめられた民主党の閣僚は、ここへ来て、「個人的には」とか「中長期的には」などと曖昧な修飾語をつけながら「原発をなくして行きたい」などという無責任な発言を始めた。これは、もちろん、官僚の振り付けではない。単に、選挙目当ての「似非」脱原発、「にわか」脱原発に過ぎない。とりあえず、「脱原発」と言って、生き延びようというだけの輩である。こうなると、有権者は何を頼りに選挙に臨めばいいのかわからなくなる。

 しかし、実はこれから、もっとわかりやすい論点が出て来る。それは、「大飯原発」だ。元々、大飯は、安全性の確認が不十分なまま動かされた。夏の電力が足りない、という脅しで、野田内閣が強行したのだが、暑い夏も間もなく終わる。そして、実は、原発なしでも何の問題もなかったことが判明して来た。

 ならば、夏が過ぎたら、少なくとも、大飯の安全性が完全に確認できない以上、再停止するのが筋だ。橋下大阪市長も再稼働を「事実上容認」する際に、そういう考え方を明確にしていた。そろそろこの問題を再提起するタイミングだ。実は、官邸前のデモが掲げる最大のイッシューも大飯再稼働即時停止である。この問題は、大阪維新の会と他の勢力の連係が出来るかどうかをも左右するであろう。

 暑い夏の後には、熱い闘いが待っている。

「週刊現代」2012年9月8日号より

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「核のゴミ」を処理できないという大問題の解決策がない以上、「原子力は悪である」という前提に立った上で取り扱うべきだという「倫理感」が国民の共通基盤になるはずだという筆者の思いは、熱く、なおかつ説得力がある。
 福島第一原発の事故で原発の恐ろしさに目覚めた人、原子力ムラの企みと横暴に怒りを感じた人、そして「脱原発」を目指す多くの人に、真実を伝え、考える道筋を示し、そして希望を与える「魂のメッセージ」。
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