ドイツ
今週は映画の話題を2つ---『最強の2人』と『星の旅人たち』、あなたならどちらの映画を見に行きますか?
フィリップ役のフランソワ・クリュゼ(左)とドリス役のオマール・シー(右)〔PHOTO〕gettyimages

 9月1日より、日本で『最強のふたり』の全国ロードショーが始まる。2011年のフランス映画で、フランスの3人に1人が見たという記録的大ヒットとなった。ドイツでも今年の前半、あちこちでこの映画が話題をさらった。原作の本も長い間ベストセラーの棚にあった。とにかく映画を見た知り合いは、老若男女を問わず全員が「よかった」と言った。いつも意見の異なる我が家の3人娘さえ、口を揃えて「ママも見たほうがいい」と勧めた。

 こんなことは前代未聞だ。そこで、半信半疑で見に行ったのが5月のこと。すると、本当によかった! 結局、ドイツでは9週続きの第1位。今まで興行されたフランス映画では、1番の観客動員数だったそうだ。

「彼は私を対等に扱う」

 ストーリーは実話に基づいている。世界的に有名なシャンペンのメーカー、ポメリー社の総責任者フィリップは大富豪。だが1993年以来、パラグライダーの事故で、首から下がマヒしている。動かすこともできなければ、感覚もない。そんなわけで、パリはサンジェルマンにある超豪華フラットで、秘書や、何人もの使用人、介護人に囲まれて憂鬱に暮らしていた。

 その淀んだような空間に飛び込むのが、新しい介護人、ドリス。パリのスラム街の崩壊した家庭で育ち、しかも、強盗の罪で刑務所暮らしから出てきたばかり。介護人募集の広告で訪れたものの、採用されるつもりはさらさらない。心の荒れたこの黒人青年は、失業手当を貰うため、不採用のサインが必要だっただけのことだ。面接の場で、居並ぶ応募者が動機や抱負を生真面目に述べる中、ドリスはふてぶてしく言う、「不採用にしてくれ!」と。

 その様子に、一部始終を見ていたフィリップが反応する。翌日、不採用のサインを取りに来たつもりのドリスは、自分が採用されたと聞き驚愕するが、それでもしぶしぶやってみようと決意する。試験雇用期間はぎくしゃくし、しかし、フィリップはなぜかこの青年の不届きな態度にも、投げやりな態度にも寛大だ。無知や、育ちの悪さや、破天荒な行動にも、まったくもって動じない。あたかも、ドリスの中にある何か別のものに見入っているようなフィリップ。そして、笑いを忘れていた彼が、いつしか声を上げて笑い始める。

 そのうち2人の間に、不思議な心の繋がりが芽生える。本来なら、すれ違うことさえなかったほど住む世界の違う2人だ。心配した弁護士がやってきて、フィリップにドリスの解雇を促す。「調べてみたら、とんでもないごろつきだ。だいたい、あなたに何の同情も感じていない」。フィリップは言う。「彼は私を対等に扱う」。フィリップは、自分を哀れな病人として同情する人間、あるいは、自分の持つ目くるめくほどの金に跪く人間に飽き飽きしていたに違いない。ドリスはそのどちらでもない唯一の人間であったのか?

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