増税と円高政策で「製造ニッポン」は壊滅寸前。1万9000社に迫る「為替デリバティブ倒産」の危機
目指したのはこんな未来ではなかったはず・・・〔PHOTO〕gettyimages

 絶体絶命のピンチを迎えたシャープは、なりふり構わぬリストラと台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業との資本・業務提携、及びそれを条件とした銀行支援で、なんとか乗り切ろうとしている。

 危機の原因については、既に多くの指摘がなされている。

 「液晶のシャープ」にあぐらをかいた過剰な設備投資、町田勝彦相談役(今年4月まで会長)と片山幹雄会長(同社長)との葛藤、市場重視で銀行無視の資本政策、業績の下方修正を繰り返して平気な無責任経営・・・。

 自力再生が困難となった今、何を指摘され、何を批判されても仕方あるまい。

 ただ、一方で、シャープ単体を攻撃するだけでは問題は解決しない。

 苦境に喘いでいるのはシャープだけではない。ソニーやパナソニックといった家電大手も、倒産したエルピーダメモリのような半導体メーカーも、円高の前に戦意を喪失させられた。

 リーマンショック後、韓国ウォンは対ドルで2割安くなり、円は対ドルで4割高くなった。都合6割の為替要因を跳ね返して韓国サムスンに勝てるわけがない。

 つまり、シャープの経営危機は、日銀の円高政策が招いたものであり、EUの金融不安が今後、本格化するなかで、今の日銀政策が続いていれば、シャープのみならず日本の製造業は壊滅する。

中堅・中小企業を蝕む為替デリバティブ

 さらに問題なのは、「製造ニッポン」を支える中堅・中小企業が、リーマンショック前の04年から07年頃、「手数料ビジネス」への移行という銀行戦略に乗って、為替デリバティブを購入していることだ。

 この金融商品は、例えばマーケットレートが1ドル=120円の時、輸入企業が1ドル=100円で購入する権利のことだ。輸入企業にとって、支払金額の増える円安ほど怖いものはない。だから「買い予約」を入れて、リスクヘッジをする。

 円安を基調とする為替相場なら、「買い予約」を「毎月10万ドル」と設定すると、先のマーケットレートで変化すれば、毎月1,200万円の必要資金が1,000万円で済み、200万円の儲け。04年以降の円安基調の頃、銀行は積極的に為替デリバティブを売りまくり、契約を結んだ中小企業は1万9000社、契約件数は4万件にも及んだ。

 この為替デリバティブが、今、中堅・中小企業を蝕んでいる。

 帝国データバンクの調査によれば、今年上半期の「円高倒産」の負債総額は過去最大の700億円に膨らみ、倒産件数は数百社にのぼるという。数値に表すのは難しいものの、円高によって本業が不振、そこに為替デリバティブの損失が打撃を与え、倒産に追い込まれた事例は少なくない。

 円安基調の時、「毎月10万ドル」の「買い予約」の設定で「200万円の儲け」は説明したが、円高基調はこの逆である。1ドル=100円で「買い予約」を入れ、1ドル=80円で推移していれば、20円の差損。先の「200万円の儲け」は「200万円の損失」となってしまう。

 しかも、契約は「銀行有利」となっており、為替デリバティブを結ぶと、最短でも5年、長ければ10年の契約で、解約には莫大な解約手数料が発生するので、04年から07年に長期契約を結んだ企業は、アリ地獄に陥ったように利益を吐き出し続ける。

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