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■日時:2012年5月15日 18時15分~19時45分
■場所:早稲田大学8号館311講義室
■講演者:山本美香氏(フリージャーナリスト)

 シリアで取材中に銃弾で倒れたジャーナリストの山本美香さん(45)の葬儀が、8月28日、出身地である山梨県都留市でとりおこなわれた。アフガニスタンやイラクなどいくつもの戦場で取材を重ねてきた山本さんは、早稲田大学大学院のジャーナリズムスクール「J-Scool」で、今年5月、自らの体験を踏まえ、「ジャーナリズムと戦争」というテーマで講義をしていた。現代ビジネスでは、前回に引き続き、山本さんが生前、公開するように託していた講義録を紹介する。そこには、厳しい戦地での取材現場でジャーナリストとしての使命とそこから生まれる葛藤に向き合う山本さんの真摯な言葉があふれていた。

「ロイター事件」

 イラク戦争が終盤に向かっている、2003年4月上旬のことです。アメリカ軍がイラクの首都・バグダッドに侵攻していきました。軍事力の差は明らかで、米軍は圧倒的に強く、最先端の武器を使っていました。一方、イラク側は旧式の武器を使っていて、また「どこにいってしまったの?」というくらい人数も少なかった。武力の差がはっきりしている状況でした。

 このような状況の中、報道陣はバグダッドにあるパレスチナホテルに拠点を構えて取材をしていました。パレスチナホテルはイラク当局から「報道陣はここにいてください」と指定された3つのホテルの内の1つです。テレビ中継の拠点があり、イラク当局の記者会見も行われていました。そこにジャーナリストたちが居を構えていることは、もちろん米軍も知っていました。

 開戦から3週間近く経った4月8日、事件は起きました。当時は連日空爆が続き、市民の被害も拡大しており、戦争が長期化すると予想されていました。もしかすると市街戦になってバグダッドが火の海になるのでは、という話も出ていた時期です。国境は完全に封鎖されており、バグダッドにいる記者たちが脱出するというのは非常に難しかった。動く車両は空爆されるし、イラク当局のチェックもある。いずれにせよ移動や脱出は難しい状況でした。

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