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2012年08月29日(水)

『敗戦真相記』 著者:永野 護
~予告されていた平成日本の没落~

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 元日本商工会議所会頭である永野重雄らを輩出した「永野兄弟」の長兄で岸信介内閣で運輸大臣を務めた永野護。その彼が敗戦翌月、廃墟となった広島で行った講演に、さらに加筆して修正し、翌昭和21年元旦に発行したのが、この「敗戦真相記」である。

 まえがき

 この小書は去る(昭和二十年)九月、広島で行った私の講演速記を基礎に「自由国民」主筆、長谷川国雄氏に全文にわたって修正の労を煩わせたものであります。

 流れの中において流れの速さを身に感ずるほど、時代の推移の激しい今日、三カ月も前の講演をいまさら印刷に付するのもどうかと思いますが、その後の時局の変化は、私のこの講演の観察を裏書きしてくれたせいか、案外各方面に反響があり、是非まとまった本にしてくれるようにとの希望も多く、かたがた、当時の聴衆諸君に対する約束もありますので、敢えて公刊した次第です。

 この三カ月の変化のうち、特に身に染みて感じますことは、進駐軍の態度によって我々日本人は単に物質方面ばかりでなく精神的方面においても大いに学ばねばならない点が多々あることを教えられたことであります。そうして真の自由主義的生活をするためには、いたずらにその形を真似るばかりでなく、その心構えから鍛え直さなければならないのですが、ともすると自由主義と無責任・無秩序とを履き違えた行動の多いことを痛感するのです。

 これは終戦前の独善と圧制と同じように日本国民の文化的水準の低さを示す以外の何物でもないと思われます。事実、この書中にも引例した蒋介石の終戦直後の演説のように、日本は文化的にも征服されるべき劣等国と目されているのです。我々は痛切にこの現実を自覚し真剣な反省と努力とによって、日本国民の文化水準の向上をはかり、軍備より開放せられたる文化大国を再建することによって、今日の敗戦の弔鐘を、明日の勝利の暁鐘と転化し得ることと信じます。

 私がこの書において言うを苦痛とするような点まで敢えて触れて敗戦の真相を明らかにしたのは、日本が敗れたのは単に武力ばかりではなかったことを反省したいためであり、この小書が多少ともそれらの点について我が国民の参考になれば望外の仕合わせと存じます。

 昭和二十年十一月二十三日

渋谷僑居にて 永野 護

 

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