がん患者の「5年生存率」はわずか6府県のデータにすぎない! 実態の把握と治療の進展に向けて「がん登録」の法定化が急務だ!

 今や国民の2人に1人がかかり、3人に1人が亡くなる病気である、がん。予防や早期発見による治癒が可能だが、この病気の実態を正確に把握する必要がある。実はひとくちにがんといっても多くの種類がある。腫瘍の位置だけでも約100種類、病理組織で分けると2000種類にもなるという。一般に小児がんは年間に2000~2500人が罹患するというが、その種類だけでも400以上になると言う。

 ところが、そうした多くの種類があるがんについて、それぞれ患者数や罹患後の経過などはきちんと把握されていない。わが国は先進各国に比べ、がん患者の情報把握が進んでおらず、それがゆえに治療法の確立も遅れがちだ。

 その解決には、がん患者情報を集める「がん登録」が不可欠である。日本にも「院内がん登録」や「地域がん登録」という制度があるが、「健康増進法」による努力義務でしかない。また、全てのがん患者が登録されているわけではなく、都道府県によっても登録体制はバラバラなのだ。

 「5年生存率」という言葉をご存じだろう。がんを患って手術などをした後、5年後に生存している率を言う。がんの種類によって大きく差があり、厚生労働省の資料などにも記載されている。5年生存率は乳がんや甲状腺がんは8割以上なのに対して、すい臓がんは1割以下、などという数字がよく使われる。

 しかし、驚くべきことに、最新の「5年生存率」データは、1999~2002年の、それもたった6府県の登録情報から推計によって作られた数字なのだという。しかも患者が多い首都圏の都県のデータではない。宮城、山形、新潟、福井、長崎の5県と大阪府のデータをベースにしたものなのだ。全国の罹患率は、全都道府県の約半数の21府県の、2007年の登録情報から推計されている。

 こうした信じがたい情報過疎の中で、がんの"実態"把握が行われ、それに基づいて治療が行われているのだ。患者数の少ない希少がんになればなるほど、とぼしい数のサンプリング調査では正確な実態が把握できない。

 がんの正確な把握には全数登録が必要である。そのためには法律で登録を定めるほかないだろう。

データの蓄積は社会全体の共通財産

 ではなぜ、がん登録の法定化が進まないのか

 これまでにも、がん登録の法定化が具体化しそうになったことがあったが、その際、問題となったのは「個人情報」の扱いだった。患者団体側などから、最大のプライバシーともいえる罹患情報が流出してしまうのではないか、という危惧が指摘されたのだ。しかし、最近ではそうした懸念よりも、むしろ、がんという病気と闘うために社会が一丸となるには、きちんとしたデータ把握が必要だ、という考えが主流を占めている。

 今年5月には、超党派議員連盟「国会がん患者と家族の会」の総会が開かれたが、その席上、参加されていた患者団体の皆さん全員から、是非がん登録の法定化を急いでほしい、との強い意志が示された。そして同議連では、この個人情報保護問題も解決して法定化を実現しなければならない、との共通認識を得た。

 諸外国でもがん登録制度の整備は進んでいる。厚労省の資料によると、米、英、独、仏、豪、加、デンマーク、スウェーデンなどが制度を持っている。医療機関に報告の義務を課しているケースが多い。また、登録する個人情報についてもほとんどの国で匿名ではなく名前を登録している。ドイツでは15州のうち13州で氏名ではなく管理番号化したものを登録しているようだ。もちろん登録内容は本人が請求すれば開示される。

 個人情報の管理を徹底するのは言うまでもないことだ。だが、がんと闘うための社会全体の共通財産としてデータを蓄積するという点において、全データを把握できる体制の構築が必要だということである。

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