スピーカーや放水銃による警告では「領土」を守れない。先送りされた法律を制定して「海上警察権」の強化に全力で取り組むべきだ!
24日の記者会見で領土問題について自らの考えを語った野田首相〔PHOTO〕gettyimages

 ロンドンオリンピックにより世界中の国々でナショナリズムが高まる中、8月10日、15日と相次いで引き起こされた韓国元首及び中国人活動家による竹島、尖閣諸島への上陸は、わが国からも激しい非難の声が上がった。許されざることであるのは言うまでもない。24日の野田総理による異例の両島嶼に対する「我が国固有の領土である」ことの解説会見で、事態はより厳しい外交問題へと発展しかねない状況でもある。

 もちろん、竹島、尖閣に先立って行われた北方領土・国後島へのロシア・メドヴェージェフ首相の二度目の訪問も含め、この領土に関する諸国の行動は、オリンピックイヤーと国家元首の交代というタイミングにおける関係国の極めて固有の内政事情によるものであることが改めて浮き彫りにされているとも言える。そこで、ここでは、課題を整理して我が国が取るべき「領海警備」と、その本質としての「海上警察権」について記しておきたい。

 北方領土は領土問題としてロシアとの交渉が行われるべき事象であるが、竹島、尖閣諸島は我が国固有の領土であり、領土問題自体存在しない。そのうち竹島については1952年以来韓国の「法的根拠のない支配」を看過しながら「不法占拠」に対して何ら対応がなされてこなかった。常にわが国の領土であるとの主張を持ちながらも日韓関係の配慮の過程で、自民党政権は効果ある具体的な対応を執ってこなかったことは事実である。

 一方、尖閣諸島に関しては「不法占拠」など一切ない我が国の領土として、今日もある。すなわち我が国の主権を守るべく全力を尽くすことが可能な領海域なのである。

 私は、二年前、中国漁船の衝突により船長逮捕となった事件の刑事訴訟法47条で定められた証拠として採用されたビデオの情報流出の責任を問われ、国土交通大臣として問責決議を参院で受けた。結果として翌年の内閣改造で退任となり政治的責任を背負ったと思っている。

 その当時、菅総理、仙谷官房長官に対して、「大臣を退任することなどは一切構わないが、それによって何ら尖閣の守りに関して変わるわけではない。この時にこそ、領海警備の強化を図らなければならない」と強く主張。11月27日の問責決議後から退任直前までの41日間で、「海上警察権のあり方に関する検討の国土交通大臣基本方針」をまとめ、発表した。

 これこそが、現時点においても店晒しになったままの「海上保安庁法及び領海等における外国船舶の航行に関する法律の一部改正案(以下「庁法等改正案」)」の骨子だ。

改正案が成立していれば中国人活動家の上陸は阻止できた

 閣法としての提出は、今年の2月28日であった。一昨年前の12月に、当時の仙谷官房長官と「年初の提出法案ラインナップに明記はしないものの、予算通過後には法案として提出する」旨の了承を得ていたものであり、本来ならば昨年の春に法案提出されるべきものであった。昨年1月7日にすでに大臣基本方針が出来上がり、骨子は完成していたのである。

 もちろんその後の東日本大震災により、法案提出が延びたことは理解する。しかし、少なくとも災害対策あるいは原発事故対策とは別次元で国家の安全保障上極めて重要な法案である「庁法等改正案」の成立は最大の努力で取り組むべき課題であったはずだ。

 今国会においても、前国交大臣の問責により審議ストップ状態となり今日まで成立が先送りされてきた。その挙句の中国人活動家による尖閣上陸に関しては、「庁法等改正案」が成立していれば十分阻止できたとの想いがこみ上げ、憤懣やるかたない。さすがに野党も8月28日の参院決議は了承されている模様である。

 一刻も早い法案成立を望むところであり、尖閣問題については政治家として大臣職を辞するという政治的責任を負ったものの立場として、また、全力で領海の守りの強化に取り組んできたものとして、海上警察権強化について理解を求める。

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