トップエコノミストが教える「本当は危ない投資対象」の見抜き方 ~『確率・統計でわかる「金融リスク」のからくり』の著者・吉本佳生氏が特別寄稿

なぜ米ドルより豪ドルの方がハイリスクなのか

著者の吉本佳生氏

 外貨投資をおこなうとき、どうやって、投資対象の通貨を選んでいますか?

 たとえば、米ドルと豪ドルでは「どちらのほうがリスクが高いか?」をチェックしてから、片方を選んでいますか? 過去の為替レート変動のデータを調べると、対豪ドル円相場は、対米ドル円相場と比べてリスクが約3割高いとわかります。

 ここで計算した「リスク」は、統計用語でいえば、為替レートの変化率の標準偏差で、金融の世界では「ボラティリティ」と呼ばれます。金融リスクの指標には、いくつかの種類がありますが、最も基本的なリスク指標がボラティリティで、だから、単に金融リスクといえば、ふつうはボラティリティを指します。

 拙著『確率・統計でわかる「金融リスク」のからくり 「想定外の損失」をどう避けるか』(講談社ブルーバックス、2012年8月刊)は、ボラティリティなどの金融リスクの指標を計算し、実感するための本です。その内容にしたがって具体的な計算結果を引用すると、1973年に変動相場制度に移行してから2011年末までの円相場のボラティリティは、対米ドル円相場で年率11.1%、対豪ドル円相場で年率14.0%です。

 対豪ドル円相場のボラティリティのほうが約3割(より細かくいえば26%)高いといえます。そして、話をわかりやすくするために、1豪ドル=100円のときに豪ドルで外貨預金をしたとすると、1年後に1豪ドル=86円を超える円高(豪ドル安)になる確率は約6分の1あります。これは、ボラティリティの数値(この場合は年率14.0%)から計算したものです。

株式中心の投信と外貨中心の投信、どちらを選ぶ?

 投資対象の資産が変われば、ボラティリティの数値も変わります。特に、株価のボラティリティは、銘柄ごとに大きな差があります。ボラティリティが年率50%を超える銘柄もあれば、その半分以下のボラティリティしかない銘柄もあります。また、ほとんどの銘柄の株価のボラティリティは、対米ドル円相場や対豪ドル円相場のボラティリティの数倍の高さで、株式投資と外貨投資では、リスクが格段にちがうことがわかります。

『確率・統計でわかる「金融リスク」のからくり』
著者:吉本 佳生
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 証券会社や銀行の窓口で、円の預貯金や債券以外の金融商品をすすめられることがありますが、よく紹介されるものは投資信託でしょう。そして、過去に人気があった投資信託のなかには、株式投資を中心にするものと、外貨投資を中心にするものがあり、両者のリスクの比較をせずに、どちらかを選んでしまう人が多いようです。

 しかし、きちんとボラティリティを計算して比べると、株式投資は外貨投資よりも格段にリスクが高いのです。たとえば3年間の資産運用をするときに、運が悪ければ、投じた資産が半分以下に減ってしまうようなハイリスク投資は避けたいと思う人は、ふつうの外貨投資なら、その条件をほぼ満たせます。他方、十分に銘柄を分散した株式投資をおこなうとしても、ふつうの株式投資であれば、3年間で資産が半分以下になる可能性(確率)が無視できません。