消費増税は茶番に次ぐ茶番。「社会保障制度国民会議」を宙に浮かせた谷垣自民党の「罪」

 消費税率引き上げとセットで創設が決まった「社会保障制度改革国民会議」が早くも宙に浮いている。自民党が「国民会議より衆院解散・総選挙が先だ」と反対しているためだ。会議の構成メンバーすら決まらず、このままだと社会保障制度の改革論議を置き去りにして、増税だけが着々と動き出す事態になりかねない。

 国民会議の創設は8月22日に施行された社会保障制度改革推進法に盛り込まれた。そこで何を議論するのかといえば、公的年金と医療保険、介護保険、少子化対策の社会保障4分野だ。法律は国民会議について「施行日から1年を超えない範囲において政令で定める日まで置かれる」と定めている。

 つまり、来年夏までには国民会議を設置して、社会保障4分野の改革案を具体的に決めなければならない。

 年金では、現在は見送られているマクロ経済スライドの発動や厚生年金保険料の上限引き上げ、支給開始年齢の68~70歳への引き上げ、医療では70歳~74歳の窓口負担引き上げ(1割から2割へ)、外来患者について1回100円の負担上乗せなどがテーマになる。いずれも給付を抑制するのが目的だ。

 なかでも焦点は民主党政権がマニフェストに掲げた最低保障年金の扱いである。野田佳彦政権はもともと最低保障年金について、来年の通常国会に法案を提出する構えだったが、増税法案の成立を優先して、民主、自民、公明の3党合意で最低保障年金の扱いを国民会議に棚上げした。とはいえ、最低保障年金制度の創設を完全にあきらめたわけではない。

 ところが肝心の舞台である国民会議が発足しなければ、議論すらできない。そうなると社会保障と税の一体改革どころか増税だけがスタートするという、とんでもない話になってしまう。

二つの要求は同時に達成できない

 実際に消費税が引き上げられるかどうかは次の政権次第だが、法律が予定しているのは2014年4月。一方、国民会議は先に見たように法律で来年夏まで、と期限が区切られている。これから暮れにかけて来年度予算編成と税制改正、来年1月には通常国会、おそらくその前に解散・総選挙と政治日程が目白押しの中、国民会議の発足が遅れれば遅れるほど、議論は生煮えのまま消化不良でおしまいになる可能性が強まる。

 野田政権は党内に反対論が強い解散をできるだけ遅らせるためにも、早期に国民会議を発足させて議論を始めたい考えだ。だが、自民党は応じようとしない。政権とは逆に、なにより解散・総選挙を先行させたいからだ。「まず解散して新政権の下で国民会議をつくるべきだ」というのが表向きの理由である。

 だが、この理屈は根本的に矛盾している。そもそも国民会議の創設をもちかけたのは自民党だった。3党合意を結んだ際、「国民会議は、最低保障年金の旗を簡単に降ろせない野田政権のために出した『助け船』だ」と公言する自民党幹部もいた。

 それがいまになって「国民会議より解散・総選挙を」というのは、当初の主張を反故にしたも同然である。その場しのぎのご都合主義というほかない。

 自民党が「総選挙後に国民会議を」なんて言っても、次の政権が必ず民主、自民、公明3党の政権になると決まっているわけではない。いくら法律で設置が決まっているとはいえ、次の政権が非民自公政権になれば、民自公の3党が談合で決めた会議は結局、形だけのものになって、あっという間にゴミ箱行きだろう。

 なぜ自民党はこういう矛盾する行動に出たのか。それは解散・総選挙を求めながら、増税+社会保障制度改革も実現するという「二兎を追う」戦略自体が初めから矛盾していたからだ。本当に増税と社会保障制度改革をしようとするなら、解散は後回しにして、さっさと国民会議をつくって議論を始めればいい。

 逆に、初めから解散を最優先するなら、それは「自民も民主も衆院議員はみんな議員バッジを外して辞職しよう」という話なので当然、国民会議で改革議論などできない。一方で解散を要求しながら、他方で改革論議しようという話自体が原理的に矛盾していた。二つの要求は同時に達成できないのだ。

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