シリアで取材中に亡くなった山本美香さんが学生たちに遺した「最期の講義」前編 
「それでも私が戦争取材を続ける理由」

■日時: 2012年5月8日 18時15分~19時45分
■場所: 早稲田大学8号館311講義室
■講演者: 山本美香氏

8月20日、激しい内線が続くシリアで取材中、ジャーナリストの山本美香さん(45)が銃撃を受けて亡くなった。アフガニスタンやイラクなどいくつもの戦場で取材を重ねてきた山本さんは、早稲田大学大学院のジャーナリズムスクール「J-Scool」で、今年5月、自らの体験を踏まえ、「ジャーナリズムと戦争」というテーマで講義をしていた。そして、山本さんはその講義録を、現代ビジネスとJーSchoolの共同企画の第一弾として、現代ビジネスで公開するように生前、託していた。「ジャーナリストとしての使命」と向き合う山本さんの思いがつまった「最期の講義録」を、公開する。

『サラエボの冬』の衝撃

 今日は私がフリーランスになってからのことを具体的にご紹介しながら、「ジャーナリズムと戦争」についてお話ししていきます。

 私は1995年に朝日ニュースターを退社してフリーランスになりました。その後、独立系ジャーナリスト組織のアジアプレス・インターナショナルに所属、そこでは主にディレクターの仕事をしていました。

 日本人だけではなく、中国、インド、タイ、フィリピン、韓国など様々な国から来たジャーナリストたちが所属する国際色豊かなグループでした。そういったフリーランスのジャーナリストに出会って、彼らがどういう仕事をしているのか、どういう記事や写真を発表しているのか、また経済的にはどうなのか、といった具体的なことを知る貴重な場になったと思っています。とても刺激的な時間でした。

 日本のビデオジャーナリストの草分けでもある、佐藤和孝氏のボスニア戦争を取材した映像があります。『サラエボの冬 ~戦火の群像を記録する~』というNHK-BSで放送した長編ドキュメンタリー作品です。この作品を取材、撮影、編集したのが佐藤氏だったのです。

 この映像を観たとき、フリーランスの日本人でこういう活動をしている人をほとんど知らなかったので、本当にびっくりしました。ボスニア紛争の真っ只中、小型ビデオカメラを持って戦場の最前線だけではなく市民の生活にも入っていき、普通の人たちがどう戦争に翻弄されていくのかを描いている。人々の生活に密着したこのドキュメンタリー作品を観たとき「これはすごい!」と衝撃を受け、私もこういうことがやりたい、こういうことがやりかたったんだ、という思いがより一層強くなりました。