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現地徹底ルポ 危険地帯への建設を黙認してきた国と御用学者の大罪を暴く 大飯、志賀原発を破壊する「M7級活断層」
活断層カッターの異名を持つ衣笠氏を直撃。路上で声をかけると激高し、カメラマンを壁に押しつけてきた
3、4号機が稼働中の大飯原発からは白煙が昇っていた。左端が4号機。年末をめどに調査結果を報告する

「誰にも言わんけど、ホンネを言えばおっかないよ。活断層があるかも知れないのに、今も(原発は)動いてるんだから」

 緑が生い茂る山と、穏やかな海に囲まれたおおい町(福井県)で出会った老婆は、日差しの下で顔をしかめた。

 原子力安全・保安院は関西電力の大飯原発と北陸電力の志賀原発(石川県)の敷地の下に活断層がある疑いがあるとして、7月18日に両社に断層の再調査を命じた。しかし、大飯原発3号機と4号機はフル稼働中だ。政府は「念のための調査」であることを強調しているが、本当に念を入れるなら、運転を中止して調査をするのが筋であることは、子供でも分かる論理だ。言うまでもないが活断層は突然出現するものではない。再調査は立地時の審査では見逃されていた活断層を調べ直すことを意味する。

 一体なぜ、今になって活断層が〝発掘〟されているのだろうか。

「原子力安全・保安院や原子力安全委員会は、原発を建てたいがために、『御用学者』に杜撰な審査をさせ、それを認めることで活断層の上にも原発を建ててきたんです。大飯や志賀以外の原発からも、これからボロボロ活断層が見つかる可能性がある。さしあたり危惧されているのは、大飯原発の2号機と3号機の間を横切る『F–6断層』です。私が5月に見た資料には、岩盤と岩盤が擦れた時にできる軟らかい粘土や、細かく砕かれた岩のスケッチが描かれていた。活断層であることを示す典型的な地層です」

来年1月までの再調査が指示された志賀原発。防潮堤を建設していた。奥に1号機、2号機の排気塔が見える

 こう警鐘を鳴らすのは、東洋大学社会学部教授の渡辺満久氏(55)。変動地形学の第一人者で、「原発ゼロの会」の議員が作成した「原発危険度ランキング」の活断層評価に携わり、大飯と志賀の再調査決定に大きく影響を与えた人物だ。

 球形の原子炉建屋の直下に、幾本も走っている。

「前述のF–6断層は、大飯原発から1kmの距離にあるFO–Aという海底の活断層と連動してズレる可能性が高い。その場合、M7.6~7.8クラスの揺れが原子炉を襲う可能性もあります。あろうことか、F–6断層の上には、原発の最重要設備である『Sクラス』に分類される『緊急用取水路』が走っている。なぜこんな審査が通ったのか、理解に苦しみます」

 大飯原発の3号機と4号機が営業運転を開始したのは'91年と'93年。志賀原発の1号機と2号機は、'93年と'06年だ。当時、両原発で恣意的に活断層が見逃された疑いは拭えない。

 大飯原発は毎秒80tもの海水を冷却のために要している。冷却システムが機能しなくなった時、非常用の冷却水を確保するための設備が緊急用取水路だ。その真下の活断層が動いた時に原子炉が冷やせなくなれば、メルトダウンの悪夢が繰り返されることになる。原子炉格納容器の元設計者で、原子力安全・保安院の「ストレステスト意見聴取会」の委員を務める後藤政志氏は次のように言う。

「真下にある活断層がズレたら、原子炉はアウトです。大飯原発のようなPWR(加圧水型原子炉)の場合、格納容器の厚さは2m。地面が1mもズレたら、真っ二つに割れる。そうでなくても、地面がズレたら原子炉は自重を支えることはできません。仮に倒壊を免れた場合でも、原子炉が傾けば制御棒が入れられなくなると考えるのが自然です」

 渡辺氏は「志賀原発もM7超の地震に襲われる可能性がある」と警告する。M7級は、阪神・淡路大震災に匹敵する規模の巨大地震だ。

審査を骨抜きにする男

 再び冒頭の問いに戻る。なぜ、活断層の上に原発が建てられたのか。

 鍵を握るのは、旧通産省の工業技術院地質調査所に20年超も在籍し、原発の立地審査に携わってきた衣笠善博氏(67・東工大名誉教授)という人物だ。『福島原発事故の「犯罪」を裁く』(共著)などの著者で作家の広瀬隆氏は、衣笠氏が杜撰な審査を主導してきたと指摘する。

「私は福島第一原発事故を招いた当事者たちを、『業務上過失致死傷罪』で東京地検に告発しました(8月1日、受理)。その被告の一人が活断層の審査に携わり、活断層を短く見積もったり、なかったことにして審査を骨抜きにしてきた衣笠氏です。'09年に行われた福島第一原発の耐震安全性評価(バックチェック)をはじめ、彼は日本中のほとんどすべての原発の審査に関わっています」

 衣笠氏が審査に携わった東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)は、'07年に直下型地震に襲われ、放射性物質を含む水が漏れた。また、中国電力の島根原発3号機の設置審査の際、8kmと値切った島根原発周辺の活断層は、後に22kmに訂正されている。この審査で衣笠氏は中国電力を技術指導するとともに、国の審査にも関わっている。申請する側と審査する側の一人二役を務めているのだから、公平な審査など望むべくもない。

 また、衣笠氏は志賀原発の審査でもひとつながりの活断層を無理矢理3つに分けて評価し、想定地震規模を過小評価したと指摘されている。このため、'07年の能登半島地震では、志賀原発は〝想定外〟の揺れに襲われることになった。前述の福島第一原発のバックチェックでは大津波の可能性を指摘する声を無視し、周辺の断層の長さを〝値切る〟ことに終始した。衣笠氏は、現在も新潟県原子力安全対策課の技術委員会のメンバーとして活動している。杜撰な審査を続けてきた衣笠氏をつくば市内の自宅で直撃した。

---フライデーですが、原発立地審査の件で質問があります。

「は? 一切、答えられませんよ!」

---活断層の評価について・・・・・・

「(カメラマンに向かって)あなたは現行犯で、私の肖像権を侵したんですよ!」

 実のある答えは得られなかった。

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