アダム・スミスの「生きるヒント」 第10回
「国が豊かになるための条件とは」

第9回はこちらをご覧ください。

 アダム・スミスは国を豊かにし、国民の生活を守るために「経済学」を創りましました。競争を勝つための経済学でもなく、弱者切り捨てのための経済学でもありません。あくまでも「国全体・国民全体」の生活を考えていたのです。

 こうなると次に知りたいのが、「では一体どうすれば、国が豊かになり、国民の生活を守ることができるのか?」ということです。

 スミスは国を豊かにして国民の生活を守るためには2つのことが重要と考えました。

「富」を増やすために必要なこと

 重商主義では、「富=貴金属」とされていました。つまり、金銀財宝を持っている人が「富を持っている人」、金銀財宝を大量に保有している国が「富める国家」だったのです。それに対し、スミスは「人間の労働全般が富の源泉」と考えました。

 スミスは、国民の富は「必需品」「便益品」つまり消費者が使う商品である、そしてその「商品」は、人間が働くことで量を増やすことができる、と考えたのです。

 つまり、人間が働けば国が豊かになる、「富の源泉は、人間の労働である」ということです。これは表現を変えると、「みんなが働けば豊かになる」ということでもあります。

 そんなことは当然では? と感じるかもしれません。しかし、重商主義の考え方が広まっていた当時、これは「当たり前」ではありませんでした。

 当時は「人間の労働が富を生み出す」のではなく、金銀財宝そのものが「富」だったのです。重商主義の考えの下では、「富を増やす」ということと「人間が働く」ということは無関係なのです。

 現代でも「お金を集めること」を目的にしているような人を見かけることがあります。冷静に考えると、「お金≠豊かさ」ということは分かりますが、豊かさを求めて貯金ばかりしてしまう人も実際にいるわけです。

 ですが、やはり貴金属を持っていても人間は生活できません。「富」が必要なのです。そして、その「富」は人間が生産するものなのです。

 またスミスは、単に「働けば豊かになる」と言ったのではありません。そうではなく、どういう仕事が社会の富を増やし、またどうすればより多くの富を生み出せるかを理論的に分析していました。富を増やすためには、できるだけ多くの人間が、効率よくモノを生産すればいい、それがスミスが考えていたことでした。

 では、このスミスの考えを詳しく見ていきましょう。キーワードは「分業」と「資本蓄積」です。

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