企業・経営
最悪の選択は「霞ヶ関主導の対等合併」だ。瀬戸際に追い込まれた日本家電メーカーに「目のつけどころがシャープ」な生き残りの道はあるのか

 筆者は、かつてファンドマネージャーの仕事をしていたが、1990年代から日本のエレクトロニクス・メーカーの将来性について悲観的だった。

 理由は、(1)似た製品群を持つ大手企業が複数あって競争が厳しいこと、(2)将来有望な製品・ビジネスの芽が見えないこと、(3)製品が急速にコモディティ化していること、(4)組織が官僚的で経営に機動的な対応力がないこと、などを大手エレクトロニクス・メーカー各社に感じていたからだ。

 その後、世界的なIT需要による商機拡大や、2000年代半ばの円安による業績持ち直しなどがあったが、悪条件は何れも解消しなかった。その後、(5)海外メーカーのキャッチアップによる競争ポジション悪化、さらに、(6)国内の家電ショップの巨大化に伴う買い手側の交渉力強化による利潤縮小、さらに(6)円高、といった悪条件が追加されたことはご存知の通りだ。

 各社について、「これまで、よく保った」というのが実感だ。

 ただし、最初に本格的な危機に直面する大手エレクトロニクス・メーカーが、シャープだとは思っていなかった。

リストラ策の発表にも市場は冷ややかだった

 8月21日付けの新聞各紙は、これまで同社が5000人の予定だった人員削減に、海外事業所で3000人を追加して合計8000人とする(全体の15%の削減だ)と発表した。

 リストラのニュースに対して株価がどう反応するかは、市場関係者が会社の将来性どう見ているかの良い試薬になる。トムソンロイターに追加リストラのニュースが出たのは、8月20日の前場の終わりくらいだが、同日の後場には株価が下げているし、21日は前日比プラスで終えたものの、前場の株価の動きは弱いものだった。

 一般に、リストラは、社員にとって悪いニュースだが、株主にとってはいいニュースだ。しかし、それは、その施策が期待以上で、且つ会社が存続すると思われている場合のことだ。市場は、シャープの会社の存続に対して厳しい目をむけているし、少なくともリストラを含む現在の経営方針を十分なものとは見ていないように思われる。

 前週末の金曜日の後場には、シャープの株価が一時急上昇する局面があった。これは、台湾の鴻海精密工業のシャープに対する出資比率が高まるのではないかとの憶測記事が出たことに対する反応だった。

 今や、多くの株主は、鴻海の出資比率が高まって自らの持ち分が低下することよりも、シャープの存続の可能性が高まることのほうを評価していよう。シャープと鴻海は現在、出資の条件について交渉中だが、交渉の形勢は、半ば生殺与奪の権を握っている鴻海側が圧倒的に有利だ。

 一般論としていえば、シャープ側が交渉上の有利を得るためには、鴻海と十分競合できる現実的な出資者候補を別に連れてくる必要があるだろう(少なくとも、短期間に可能だとは思えないが)。

 また、21日には、日本格付け投資研究所(R&I)が、シャープの発行体格付けをA?(シングル・エー・マイナス)から、BBB(トリプル・ビー)に二段階格下げした。ジャンク・ボンド並みとされるBB+以下の格付けには、もう2ノッチ(二段階)余裕があるが、R&Iはシャープの格付けに対して「格下げ方向のレーティングモニター」を継続すると発表しており、底打ち感はない。直接金融の活用が進んでいたシャープの財務戦略が裏目に出ている感がある。

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