スポーツ

二宮清純レポート 栗山英樹(51歳・日本ハムファイターズ監督)小手先の技術より、最後の勝負は「愛」だよ

2012年08月22日(水) 週刊現代
週刊現代

 熱しやすい男だ。我慢も得意らしい。チャンスの神様というものが存在するなら、実に21年もの時を経て、順番は巡ってきたのだ。51歳の新人監督は、今季、混戦模様のパ・リーグで台風の目となった。

斎藤佑樹を使う理由

「投げたいところに投げられていない。ランナーを出しても(本塁に)還さないのが彼の特長なのにランナーを出したら止まらなくなってしまう」

 これと見込んだ男が、思うように伸びてこない。本人も辛いが、上司はもっと辛い。ゆえに、これは苦渋の決断だったに違いない。

 7月29日、京セラドームでのオリックス対北海道日本ハム戦。7安打6失点を喫して4回途中でマウンドを降りた先発投手の斎藤佑樹に対し、試合後、監督の栗山英樹は斎藤にとって故障以外では初となる二軍落ちを命じた。

 2年目のシーズンを迎えた今季の斎藤は、指揮官の期待に応え、開幕戦で勝利投手に。4戦目のオリックス戦ではプロ初完封を記録するなど上々の滑り出しだった。

 しかし、6月6日の広島戦を最後に白星から遠ざかり、2ヵ月にわたって勝てない状況が続いている。

「調子は悪くないのに点を取られてしまう」と斎藤。これが実力なのか、それともただ運に見放されただけなのか……。

 栗山にインタビューしたのは前半戦最後の7月17日。斎藤の二軍落ちの2週間前だ。札幌の空は抜けるように青かった。日本各地で猛暑日が報じられるなか、札幌ではさわやかな風がプラタナスの葉を揺らしていた。

 不振に喘ぐ斎藤をどう見ているのか。単刀直入に切り出した。

「最初からずっと勝ち続けられるほどプロは甘くないですよ。ここからが本当の勝負。(後半戦に入っても)悪ければ、いろんなやり方を考えなくてはなりません。将来的に斎藤をどう育てるか。僕は毎年、ローテーションを守り、2ケタ勝てるピッチャーになってもらいたい。そのためには厳しさも必要かもしれません」

 おそらく、この時点で栗山は二軍落ちも選択肢のひとつとして検討していたのだろう。泣いて馬謖を斬ったのではない。「二軍で2試合投げさせる」(吉井理人投手コーチ)ことで再生のチャンスを与えたのである。

 開幕前、今季の日本ハムは5年連続開幕投手を務めたダルビッシュ有がメジャーリーグのレンジャーズに移籍したことで投手力の弱体化が指摘された。

 黙っていても、2ケタの貯金をもたらしてくれた絶対的なエースの不在をどう補うか。新任の指揮官に与えられた最初の仕事はそれだった。

 さて栗山はどうしたか。開幕ゲームに甲子園のスターを起用したのである。

1
nextpage


Special Feature
最新号のご紹介