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本当は誰が誰を真似したのか? ~アップル対サムスンのスマホ特許裁判

〔PHOTO〕gettyimages

 先月末に米国で始まったアップル対サムスンの特許裁判。これまでのところは、主に製品のデザイン(意匠)を巡って激しい議論の応酬が繰り広げられた。平たく言えば、アップルは「サムスン製のスマートフォンやタブレットは、アイフォーンやアイパッドにそっくりだ」と主張し、サムスンは「あんな形の端末は昔からいくらでもあった」と反論している。

 そもそもアップルは自社製モバイル端末のデザインについて、どのような特許を取得しているのだろうか? まずアイパッドについては、米特許商標庁(USPTO)から2005年5月に、このようなデザイン特許を、アイフォーンについては2009年5月にこのようなデザイン特許を取得している。

 筆者はデザインや特許に関しては素人である。そう断った上で敢えて言わせて頂くと、上記図面に描かれているアイパッドの形状は筆者には単なる四角いパネルにしか見えない。かつてサムスンの某幹部が、「アップルは『四角形を発明した』とでも言いたいのか!」と発言したとされるが、これが特許として認められてしまうなら、そう言いたくなる気持ちも分かる。一方、アイフォーンのそれはアイパッドよりは意匠めいて見えるが、それでもやはり随分とシンプルである。

 今回の裁判でサムスンは、「アップル製端末のデザインとは要するに、『四隅が丸いカーブを描いている四角形(rounded corners and rectangles)』だが、こうした形状のタッチパネル方式スマートフォンは、アイフォーンが登場するよりも前からあった」と主張している。同社がその一例として挙げたのが、同じ韓国のメーカーであるLGが2006年12月に発表した「LG Prada」と呼ばれるスマートフォン(図1)だ。

図1)LGが2006年末に発表したLG Prada

 LG Pradaの形状は明らかにアイフォーンとの類似性が見られる。それはまたアイフォーンと同じく静電方式のタッチパネルを搭載し、音楽再生プレイヤーとしても使える等、部品や機能面でも共通性がある。しかも米国でアイフォーンが発表された2007年1月よりも前に、公式にお披露目されている。これらの点を指摘することで、サムスンは「アイフォーンは、アップルが言うほど独創的な製品ではない」と批判した。

 もっともアイフォーンの方が後に発表されたからと言って、それがLG Pradaのデザインを模倣したというわけではない。同じく今回の裁判でアップルが開示した内部資料によって、同社がアイフォーンのデザインを初めて考案したのは(LG Pradaが発表されるより、ずっと以前の)2005年8月であることが示されたからだ。

 つまりアップルとLGはそれぞれ独自に、しかし結果的には類似性の高いデザインに行き着いた可能性が高い。いずれにせよ意匠面から見た場合、アップル製品の独創性を否定するサムスンの主張には一理あるように思える。

なぜアップルはグーグルを直接訴えないのか

 裁判の争点は今後、モバイル端末のOS(基本ソフト)やコンテンツ配信システムなど、ソフトウエアやサービスにまで拡大されるかもしれない。そうなると状況が複雑になってくる。

 というのも、サムスン製のスマートフォンやタブレットに搭載されているOSは、同社独自のものではなく、グーグルが開発・提供している「アンドロイド」と呼ばれる基本ソフトであるからだ。アップルはこの他に、台湾HTCにも同様の訴訟を提起しているが、同社製のスマートフォンやタブレットにもアンドロイドが搭載されている。このためアップルとこれらアジア・メーカーとの裁判は、一般にアップル対グーグルの代理戦争と見られている。

 では、なぜアップルは直接グーグルを訴えないで、代わりにサムスンやHTCを訴えたのだろうか?

 一般には、アンドロイドが無償ソフトとして提供されていることが、その理由とされている。つまりグーグルはアンドロイドから直接、収益を得ているわけではないので、仮にアップルがグーグルを訴えて勝ったとしても、損害賠償などを勝ち取り難い。それよりも、スマートフォンやタブレットでがっぽり儲けているアジア・メーカーを訴える方が手っ取り早いという考え方だ。

 しかし他にも理由は考えられる。ことインターネット接続のスマートフォンについては、アップルとグーグルのどちらがどちらを真似した、とは簡単には言えないのだ。一般にはグーグルのアンドロイドが、アップルのアイフォーン(より厳密には、その基本ソフトであるiOS)を模倣したと見られている。

 実際、故スティーブ・ジョブズ氏は、グーグルがアンドロイドを携えてスマートフォン・ビジネスに参入してきたのを知って、「俺たちが奴ら(グーグル)の領土に侵入したんじゃない、奴らが俺たちの領土に踏み込んで来たんだ。アンドロイドは絶対叩き潰さねばならない」と言って、激怒したとされる。これは明らかにグーグルがアップルの真似をしたという前提に立っている。

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