徳大寺有恒 第3回 「鷹匠壽で出される、あの上質な脂がのった野鴨をほおばりながら葉巻をくゆらせたい」

撮影:立木義浩

第2回はこちらをご覧ください。

徳大寺 シマジさんには、いままでに沢山美味しいものを教えてもらったけど、最高は浅草の鷹匠寿かな。

セオ あそこは本当に美味しいですね。ぼくもシマジさんの驥尾に付して、何度か行かせてもらいました。一見さんはなかなか入れない店ですからね。

徳大寺 あそこの女将さんと息子のミツルがいいな。あれだけの上質な野鴨を食べさせてくれる店はほかにないでしょう。シマジさんは何年くらいのお付き合いなんですか? よく簡単に予約が取れますね。

シマジ わたしが寿に行くときは必ず、「ただいまー」っていいながら玄関をくぐるんです。すると元気のいい女将さんが「おかえりー」って答えてくれる。そうだな、30代前半くらいから、毎年5,6回は通っていますからはじめて行ったのは40年ほど前になりますか。

徳大寺 だからシマジさんは特別で、家族みたいなもんなんだ。

シマジ ミツルがわたしを「お父さん、お父さん」と呼んで、目に余るえこひいきをしてくれるんで、マガジンハウスの木滑さんが「ミツル、おまえはシマジの隠し子なんだぞ」といいだした。

 ある日、ミツルが「お父さん、ホントに、おれ、お父さんの子供なのか」って訊くから、わたしはミツルをしっかり抱きしめて「じつはそうなんだ。ミツル、これからも親孝行してくれ。おれもおまえを可愛がる」と言ってやったんです。噂では、わたしが銀座の女に生ませ持て余し、あの気風のいい女将さんに預けたことになっているんです。