「3党合意」堅持を選択した自民・谷垣総裁。「近いうち」、つまり9月8日の今国会会期末までの衆院解散の可能性は高いとみた!
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 「私も財務大臣を3年やって責任があるわけですよ。小泉(純一郎元首相)さんが自分の(首相)在任期間はやらないと言ったけど。やはり消費増税をやるタイミングは、後の経済情勢を考えると、小泉政権末期から、私も出た(2006年の自民党)総裁選の頃だったと思います。あの時は私が総裁選に勝つ状況ではなかったが、もし勝って総理・総裁になっていれば、手がけたと思いますよ。実際にやれたかどうかは別ですが」---。

 消費税増税関連法案が8月10日の参院本会議で成立する約1週間前、前回コラムでも書いたように、自民党の谷垣禎一総裁が筆者との酒食の席で語った言葉である。

 完オフ懇談での会話を紹介するのはルール違反である。だが、谷垣総裁が急転直下、それまでの自民党単独でも内閣不信任案を衆院、首相問責決議案を参院へ提出するという強硬路線から転じて民主、自民、公明3党の党首会談に応じ、消費税増税関連法案の参院採決容認に変わった「理由」を理解するのには、このオフレコ発言を紹介する必要があると判断したのだ。

 谷垣氏はもちろん、同発言以外にも多々機微に触れる重要なことに言及している。しかし、さらに踏み込んで彼の発言内容を当コラムに記すわけにはいかない。敢えて言えば、衆院当選10回を数えるベテランの谷垣氏は、政権党に所属する主要閣僚の座に居ようが、野党第1党の党首であろうが、この時期に消費税率を引き上げるための法案成立の必要性を人一倍強く感じ、野田佳彦首相が求めた先の「3党合意」(6月15日)堅持を選択したのである。

 言わば、政治家の矜持からの決断であった。その矜持を知るための「材料」が、まさに先述の谷垣氏発言なのだ。

早稲田雄弁会人脈の鳩首協議で生まれた「近いうちに」

 とは言え、一寸先は闇の政治の世界である。当然のことながら、8日の3党党首会談に至るまでには野田官邸と自民党執行部との間には押したり引いたりの駆け引きと、文言を巡る激しい事前協議が繰り返された。

 従って、読者の大きな関心が、例の「近い将来」から「近いうちに」へ修正された過程で何があったのか、誰がそうした知恵を出したのかという疑問に行き着くのは当然である。

 解を先に言うと、大きな役割を果たしたのは、早稲田大学雄弁会人脈である。具体的には、自民党の森喜朗元首相、額賀福志郎元財務相、そして民主党の安住淳財務相の3人だ。森氏が一貫して野田政権を衆院解散・総選挙に追い込むことと消費税増税関連法案を成立させることという「2兎」を追うのではなく、厳しい国内外の経済状況下の現在の日本には消費増税実現という「1兎」を追うべきだと、谷垣氏に進言してきたことは周知の通りだ。

 また、「制御不能」と言われる参院自民党に対して今なお影響力を保持するとされる青木幹雄元官房長官が額賀氏のバックに控えていることもよく知られているところだ。党内では第3派閥とはいえ、平成研究会(額賀派)を額賀氏は率いる。その額賀氏が、8日午後、内閣不信任案と首相問責決議案の提出に踏み切るべきだとの主戦論が渦巻く自民党本部を訪れ、谷垣総裁と会談した。間もなくして、強硬路線への転進止む無しの声で充満していた総裁室が冷静になったというのだ。

 一方、民主党国対委員長時代の安住氏の評判は必ずしもいいものではなかったが、現在の消費増税政局の節目節目に森元首相を日参し、助言を仰いできた経緯があった。そのうえ今回の法案採決を巡り野田官邸・民主党執行部と自民党執行部との意思疎通が十分でなかったことから、野田氏が安住氏の早稲田大学雄弁会人脈に落しどころの調整を託したのである。

 森喜朗と聞けば、「ノミの心臓、フカの脳みそ」と思い浮かべる人が少なくない。が、現在の森氏は、実は先に次期衆院選不出馬を表明したとことも含めて「国を憂う人」との評価が党内外に定着、逆に自民党の首相経験者の中で存在感が増している。そして森、額賀(青木)、安住各氏の鳩首協議で生まれたのが「近いうちに」であったという。

 いずれにしても、現時点での筆者の読みは、政治ジャーナリストの中では少数派だが、依然として9月8日の今国会会期末までの衆院解散の可能性が高いというものだ。週明けには一気に「選挙モード」になるのは必至である。

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