中国
「文明中国」に凱旋帰国する金メダリストたちには、どんな「第二の人生」が待っているのか?
女子に続いてこの種目で2連覇を達成した卓球男子団体チーム〔PHOTO〕gettyimages

 日本人が大いに活躍したロンドン・オリンピックも、いよいよ終幕である。日本では連日、眠れぬ夜が続いたが、中国でも連日連夜、金メダル・ラッシュに沸いた。8月10日現在で、日本の金メダル数5個に対して、中国は37個と、アメリカの39個に次いで2位につけている。

 だが4年前のような、全国民総出での盛り上がりはなく、中国人は今回、冷静にテレビ観戦した。中国は前回の北京オリンピックの際は、地元開催だけに、気合いの入り方が違っていた。大袈裟な言い方をすれば、オリンピックを境に、北京のすべてが変わった。2路線しかなかった地下鉄が十数線に増え(現在も工事中)、高速道路や環状道路が整備され、列を作って並ぶ習慣や、右側通行、ポイ捨て禁止、道路標識や道案内などなど、中国式に言えば「文明中国」に変貌を遂げたのだった。

金メダリストは国民的ヒーロー

 当時の北京オリンピック実行委員会の幹部だった中国人に、改めて北京オリンピックの意義について聞くと、次のように答えた。

 「2008年までの中国は、根深い欧米コンプレックスに覆われていた。1840年のアヘン戦争以降、戦争からスポーツに至るまで、中国人は欧米人に対して、連戦連敗だった。それが北京オリンピックを成功裏に終え、かつ史上最多の金メダルを獲得したことで、われわれも世界で欧米に伍していけるという自信がついた。

 北京オリンピックの直後にアメリカ発の金融危機に見舞われた際にも、中国が世界経済の復興を牽引したし、2010年には日本を抜いて世界第2の経済大国になった。昨今のユーロ危機でも、危機脱出に向けて一番貢献しているのは中国だ。その意味では、北京オリンピックは、中国が『普通の国』となる絶好の機会になった」

 この中国人官僚の言を借りるなら、今回のロンドン・オリンピックは、中国が「普通の国」として臨んだ初めてのオリンピックということが言える。

 だが、昔もいまも変わらないのは、オリンピックの金メダリストたちが、中国に凱旋帰国し、国民的ヒーローとなることだ。

 中国も日本と同様、「80後」(1980年代生まれ)、「90後」(1990年代生まれ)と呼ばれる若者たちがヒーロー・ヒロインとなる道は、芸能界とスポーツ界にほぼ限られている。だが昨今の特徴としては、芸能界で「明星」となる若者は、北京や上海など、大都市の比較的裕福な家庭の出身が大勢を占めるようになった。子供の頃からバレエやダンスなどを習い、俳優学校に通い、裕福な親が高い月謝を払って「金の卵」を養成していくというパターンだ。

 これに対し、スポーツ界はいまだに、農村部の衣食住もまともに足りていないような地域から、サクセス・ストーリーを体現できるほぼ唯一のルートとなっている。そもそも、中国の今時の都市部の贅沢な一人っ子たちは、毎日10時間もピンポン玉を単調に打ち合ったり、一日100回も10mの高さからプールに飛び込んだりというようなことはできない。

 中国の国技と言われる卓球やバドミントンなどは、国家代表クラスだけで、それぞれ2万人前後もいるのだ。オリンピックで金メダルを獲るよりも、中国代表に選ばれる方が難しいと言われる世界で、青春のすべてを懸けて艱難辛苦の道を歩んで行けるのは、「国家代表に選ばれると飢えることはない」と考える農村の子供たちだけなのである。

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