特集 朽ちる橋梁 進む橋梁の老朽化
20年後には半数以上が改修必要な「築50年以上」
急がれる安全な国土のインフラ整備

メーンケーブル劣化が見つかった原田橋=5月14日、浜松市提供

 昨年の東日本大震災をきっかけに道路や橋などインフラ整備の重要性が再認識されている。度重なる水害にも見舞われ、民主党政権の「コンクリートから人へ」という過度な公共事業の抑制が国土インフラの弱体化を招いているという批判も強まっている。野党・自民党が「国土強靭化基本法案」を国会に提出し民主党政権を揺さぶるなど政局も絡み出した。中でも今、喫緊の課題に上がっているのが、地方自治体が管理する橋梁の老朽化で、全国的に通行止めや通行規制の数が急増している。道路整備で日本の先を行く車大国・米国では、すでに橋梁が落ちる大事故が起きており、日本でも同様の事故が発生する可能性を指摘する専門家もいる。厳しい財政の中で「必要な公共事業」が求められる。

 国土交通省は07年度から、定期点検などが不十分といわれる自治体の橋梁を対象に、その修繕計画の策定に補助金を出す政策を進めてきたが、3年間で打ち切りとなり整備は頭打ちになっている。国交省は、橋梁の保全方法を、損傷が深刻化してから対策を実施する「事後保全」から、損傷が軽微な段階で補修する「予防保全」へ政策を転換し、橋梁の長寿命化を図ってきたが、なかなか進んでいないのが現状だ。

 地方自治体が管理する橋梁の現状は、通行規制数から明らかだ。国交省によると、今年4月段階でまとめた通行止めの橋梁は、橋の長さが15メートル以上の橋梁数は217(都道府県管理7、政令市・市区町村管理210)。さらに橋の長さが2メートル以上まで広げると326(都道府県管理8、政令市・市区町村管理318)が通行不能になっている。08年4月時点では計143だったので2倍強となっている。これらは架け替えなどの抜本的な対策が必要とされる。

 また、車両重量などで通行を規制した橋梁は、長さ15㍍以上の橋梁は1161(都道府県管理112、政令市・市区町村管理1049)で、橋の長さが2メートル以上となると1686(都道府県管理130、政令市・市区町村管理1556)あった。これも4年前の834から倍増している。

 日本の高速道路や一般道路に架かる橋梁は計約15万5200。内訳は高速自動車国道が約6800、一般国道が約2万5200、都道府県道が約3万3700、市町村道が約8万9500となっている。

 建設後50年以上の橋梁は10年4月時点で8%あり、10年後に26%、20年後には53%になる。50年という期間は、道路の損傷が目立ち、改修が必要なケースが増えてくる目安とされている。自治体管理の橋梁だけでみると20年後に54%の橋が築後50年を超えるという。つまり2030年代には全国の橋梁の半数以上が大規模な改修や架け替えが必要になるという計算になる。

 日本の橋梁は、東京オリンピック前から本格的に建設が始まった。落橋などの深刻な事態を招かないためには、定期的な点検が必要とされる。国が管理する国道の場合、新設された橋梁は供用開始から2年以内に初回の定期点検を実施し、2回目以降は5年ごとの点検で、橋桁や梁、床板など、車からは見えない場所を確認している。04年から09年までに定期点検をした約2万2000の橋梁のうち、47%が補修などの対策が必要とされた。

定期点検の「予算がない」「技術者がいない」
自治体管理のお寒い事情

 これに対して、自治体が管理する道路橋梁の点検はどうなっているのだろうか。国交省によると、都道府県ではすべての橋梁の定期点検が行われているが、その頻度はまちまちで、市区町村は8割程度の実施状況となっている。同省が約180自治体からヒヤリングしたところ「予算が確保できない」「点検し評価する技術者がいない」という回答が大半を占めた。

 こうしたヒヤリング結果を受けて、国交省は07年度から橋梁の「長寿命化修繕計画」を策定する地方自治体に対して、事業費の2分1を補助する制度を創設した。対象は補助を受けている国道、主要地方道、重要な道路ネットワーク上の橋梁で、07年度は29都府県、7政令指定都市、6市の計42自治体が利用し、事業費は約5億4000万円で9700の橋梁の修繕計画が策定された。

 日常的な維持管理に加えて、個々の橋梁に対して、効率的、効果的な修繕を計画的に実施することで、橋梁の長寿命化を図ることができる。橋梁の修繕経費や架け替えにかかわる費用の縮減も期待されている。自治体に対しては財政的な支援に加えて、道路管理者向けの橋梁技術講習会を開くなどして、技術的な支援も実施した。

 この制度の補助は、3年間で社会資本整備総合交付金に代わったが、長寿命化修繕計画の策定は継続されている。全自治体の橋梁の策定率(11年4月現在)をみると、都道府県管理が47都道府県の4万4678で96%、政令市は19自治体7061で83%となった。

 しかし、市区町村は、1696自治体のうち458自治体が2万2423の橋梁で策定しているに過ぎず、策定率は27%にとどまっている。さらに、長寿命化修繕計画に基づいて、実際に修繕をした橋梁は全国平均で約2%にとどまっており、計画は作ったが、改修が進んでいない実態が浮き彫りになっている。

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