「固定買い取り」で普及加速へ
電気料金押し上げ要因にも 模索が続く「適正価格」[再生エネルギー]

岡山市の公共施設屋上に設置された太陽光パネル=6月28日

 太陽光、風力など再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が長期間、固定価格で買い取る「固定価格買い取り制度」が、7月から始まった。再生エネは「脱原発依存」で不足する電力を補うために、普及を加速させる必要がある。新制度はその後押しをするためのものだが、買い取り価格次第では、電気料金を大きく押し上げ、国民経済の阻害要因にもなる。政府は普及の具合をにらみながら、適切な価格を探る柔軟な対応を求められる。

 買い取り対象になるのは、太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマスで発電した電気だ。太陽光発電については、09年から住宅用で、居住者が使う分を除いた余剰電力に限り、電力会社が固定価格で買い取る制度が導入されていたが、新制度に一本化された。

 電力会社が買い取る価格は、再生エネの種類や規模に応じて、中立的な第三者委員会(調達価格等算定委員会)が具体案を示し、政府が決める。

 当初は太陽光が1キロワット時当たり42円、風力が同23・1~57・75円など、発電事業者の要望に近い高めの設定になった。再生エネ事業への参入を一気に増やすことが狙いだ。

 買い取り価格は、発電事業者が国の認定を受けた時の水準が10~20年間維持される。価格は原則として毎年見直され、新たに参入する業者には、参入した時の価格が適用される。制度導入後3年間については、再生可能エネルギーによる発電事業への集中的な参入を図るため、発電事業者に利益が出るよう、特に配慮して価格設定することになっている。

 確かに、供給拡大には、てこ入れが必要だ。経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会がまとめたエネルギーミックス(電源ごとの構成)の選択肢は、30年に再生エネが、総発電量の25~35%を担うと見込んでいる。10年実績(約10%)の2~3倍以上になる想定だ。

 しかも、再生エネの実績のうち9割は規模の大きな水力発電によるものだから、太陽光、風力など新制度の対象になる発電は、総発電量の1%弱に過ぎない。今後、大型水力の伸びは期待できないから、目標達成には、新制度の対象になる再生エネを全体で15~25倍に拡大しなければならない。

 例えば、現在わずか0・4%の風力は最大12%まで急伸させ、太陽光(10年実績0・3%)は6%へ、地熱(同0・2%)は3~4%へと引き上げるというのが、基本問題委員会の想定だ。

 経産省の集計によると、今年度の再生エネ発電事業(大型水力を除く)への新規参入は、発電能力で計250万キロワット超になる。発電能力では、原発2・5基分の電力供給が上乗せされる格好だ。

 前年度の再生エネ(同)の発電能力は、1945万キロワットだったから、新制度導入によって13%増える計算になる。初年度は、高めの買い取り価格設定が功を奏したといえそうだ。

 とはいえ、このペースでは10年後でも再生エネは、現在の3倍程度にしか増えない。政府の想定を達成するには、一段のてこ入れが必要だ。

全国平均で月87円負担増

 しかし、買い取り価格の引き上げには限界がある。電力会社は、買い取り費用を電気料金に転嫁する仕組みになっているため、価格の引き上げは、家計や企業の負担増に直結するからだ。

 今回の買い取り価格の場合、1キロワット時当たり0・22円が電気代に上乗せされる。標準家庭(1カ月の電気使用量が300キロワット時)の今年度の負担増は、新制度による分だけで月66円。制度導入前の余剰太陽光発電買い取り制度に伴う負担も残っているため、それを加えると、全国平均で月87円程度になる。

 今回の価格水準に対しても、経済界からは批判的な声が相次いでいる。経済同友会の長谷川閑史代表幹事は、「(再生可能エネルギーの普及という)インセンティブに重きが置かれ過ぎて、需要者の負担増になるのではないか」と懸念を示し、「見直していくことが必要だ」と注文を付けた。

 経団連の米倉弘昌会長も「買い取り価格の設定根拠が不透明だ」と疑問を呈し、日商の岡村正会頭も「企業や国民の負担増につながる」と、慎重な価格設定を求める考えを示した。

 再生エネによる発電コストは、既存の火力発電などに比べて割高だから、普及が進めば進むほど利用者の負担は重くなる。

 慶応大学産業研究所の試算によると、30年に国内の全発電量に占める再生エネの割合を37%にした場合、標準家庭の負担増は月2400円超になるという。そうなると、再生エネへの風当たりは、極めて厳しくなるだろう。

 実際、00年に固定価格買い取り制度を導入したドイツでは、09年に月430円だった1世帯当たりの負担額が、11年には1170円に達した。国民の不満が高まったことから、負担軽減のため今春から買い取り価格を20~29%引き下げざるを得なくなった。

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