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 原発関係者が参加していたことでやらせと大批判を浴びた原発問題公聴会。正式には「エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会」という。国家戦略室が行っているエネルギー・環境会議の中で、国民的な議論が必要とされたことを受け、8月4日まで全国11ヵ所で行われた。このほかに、討論型世論調査という新しい手法の調査も8月4~5日に行われた。

 そもそもこの種の公聴会になんの意味があるのか。国民の意見を聞いていますよというポーズにしか見えず、関係者が参加していようといまいと、いずれにせよ「やらせ」みたいなものなのではないのか。

 官僚側のホンネとタテマエはどうなのかと考えると、タテマエは、「広く国民の意見を聞くことが必要だから」となる。しかし、それほど重要な問題ならいっそ国民投票にすればいいではないか。日本においては憲法改正の際のみ国民投票が行われることになっているが、本当に「国民的議論」が必要だと政府が思うなら、法改正して原発問題でも国民投票をやったほうがいい。地方自治体では、一定の住民投票の制度が設けられているので、それを活用してもいい。

 そうすれば、中央の行政組織で官僚がわざわざ「国民の意見聴取」を行うまでもない。そもそもこうした重大な話は政治問題にし、選挙で決着すべき。国会議員は国民の間接代表なのだから、国会できちんと議論すればいいだけのことだ。

 このように考えると、官僚のホンネが見えてくる。要するに、官僚やその長になっている大臣が、「原発問題」を自分で仕切りたいだけ。今回の公聴会の事務局は内閣官房で、経済産業省と環境省の協力を得て行うことになっているが、実質的には資源エネルギー庁が中心でやっているという。

 事務方官僚はこれまでどおり原発依存でいきたい。一方でエネルギー・環境会議議長の古川元久国家戦略担当大臣も政治家としてエネルギー問題を仕切りたい。その反面エネルギー・原発問題を争点にする選挙はやりたくないと思っている。民主党が大敗することが目に見えているからだ。できれば、早いうちに処理してしまいたい。このタイミングで公聴会が開かれたのは、そんな両者の思惑が背景にあった。

 そもそもこの公聴会の仕組みからして、一定の結論を誘導するようになっていることに注意したい。2030年時点の原発依存度として、「0%」「15%」「20~25%」の3つの選択肢を掲げているが、原発を減らす工程を2030年ではなく2020年に前倒しするといった意見はハナから無視されていた。しかも、「0%」「15%」「20~25%」について支持者それぞれ3人ずつを抽選で選んで意見を述べさせていたが、本来であれば3人ずつではなくそれぞれの応募者数に応じて比例的に人数を配分するべきで、3人という枠をはめていること自体不公平だった。

 結局、「やらせ」批判が起きてから他の選択肢も作り、発言者を計9名から12名に拡大し、原発関係者の意見表明は控えてもらった。ここまでくると、もう穏便な「落としどころ」に意見誘導なんてできなくなり、「依存度0%」や「即時廃止」を支持する意見が圧倒的に多くなっている。

 官僚が政治家のまねごとをして、「国民からの意見の吸い上げ」なんてやろうとするからこんなことになるのだ。いまこそエネルギー原発問題を争点にして、選挙を通じて本当の意味での「国民の声」を問うべきではないか。

「週刊現代」2012年8月18・25日号より


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