福島第一原発事故のテレビ会議映像をひた隠す東京電力経営陣に疑問あり!
東京電力の下河辺和彦会長(左)と広瀬直己社長(右)〔PHOTO〕gettyimages

 オリンピックの期間中は、商業的に成り立つテレビや新聞にとって、「日本のメダル獲得個数」のようなニュースが、最も価値のあるニュースになることは仕方のないことだ。それでは、あまりに馬鹿馬鹿しかろうと思う読者は、「現代ビジネス」のようなメディアに接して、物を考えたらいい。

 頭ではそのように分かっているが、それでも、大手メディアのニュースの扱い方に驚くことがある。

 それは、日本新聞協会の東京電力に対する申し入れを報じるニュースだった。『朝日新聞』8月4日朝刊の第37面を開き、息子と一緒に次の一手を考えるために将棋欄を切り抜こうとした筆者は、その真上に「日本新聞協会が全面公開を要望 東電テレビ会議映像」と見出しを付けた、60行弱のいわゆるベタ記事を見つけた。

 37面というと、いわゆる「社会面」の前のページだが、この記事の位置は左下で、見出しのフォントも最小クラスだ。記事の途中に、「本社も申し入れ」、「弁護士ら声明」という小見出しが入っている。だが、このように目立たない位置と大きさで報じるには、随分重要な内容の記事だった。

情報隠匿は東京電力に何の利益ももたらさない

 記事によると、東京電力は、6日から報道関係者に「一定の制限を設けて」福島第一原発の事故を巡って、事故対応に当たった同社の幹部社員のやり取りを収めたテレビ会議の映像を公開するという。問題は、この制限の内容で、公開期間を1ヵ月に限り、視聴を(報道)各社1人に限り、録音・録画を禁じ、東電の報告書に名前が載った幹部以外の個人名の報道を禁ずるなどの規制があるという。

 これに対して、日本新聞協会は「テレビ会議の録画映像の公開は極めて公共性が高い。国民の『知る権利』に応えるため、全面公開は不可欠だ」として、制限のない全面公開を行うよう申し入れたという。

 結局、6日に公開された映像は、不鮮明であるだけでなく、随所に「ぼかし」や発言を遮る「ピー音」が入り、全面公開にはほど遠い5日分の映像にとどまった。7日の新聞各紙は、公開映像の模様を伝えたが、公開が不十分であることに言及しつつも、通り一遍の紹介記事だった。

 現在も継続中の重大な事故を起こし、当面だけでも約1兆円の公的資金が投入され、国民生活への影響も大きい電気料金の値上げを行うとする東京電力が、今に至っても、第三者による事故の検証を阻む規制を設けて、同社の事故処理の様子を隠そうとしていることは大変重大な問題だ。

 このテレビ会議の模様は、会社としての東京電力と事故当時の幹部社員の責任の有無に大いにかかわる問題だし、菅直人前首相をはじめとする政治家の責任問題にも深く関わる。もちろん、将来の原発の安全確保(廃棄するとしても、廃炉が終わる日までは)に向けた教訓をも提供する、第一級の資料のはずだ。

 筆者が特に不思議に思うのは、今年の6月27日に就任した東京電力の新経営陣、特に、外部から起用された下河辺和彦氏が何を考えて、この方針を良しとしたのかだ。

 たとえば下河辺氏個人は、福島原発事故の処理に関して直接の責任を負っていないのだし、少なくとも建前上は、東京電力の経営の監視と改革を託されて現在のポストを引き受けたはずなのだから、この映像を隠す理由はない。むしろ、映像を全面公開することは、事故処理に関係のあった同社の幹部社員に対する牽制を強める効果があるはずだ。

 にもかかわらず、全面公開しないという方針には、「社員と上手く(仲良く)やる方が、自分自身が楽だ」という安易な姿勢を見て取ることができる。「下の者を信頼して任せる」トップは、社内では好かれるかも知れないが、今回のような真に重要な問題に関しては、トップが下に「丸投げ」していいはずがない。

 また、そもそもテレビ会議の映像を隠すことは、会社としての東京電力に何の利益ももたらさない。競争上の企業秘密に類する内容を含む映像ではなかろうし、もともと東電は同社の地位を脅かす競争相手がいない独占企業だ。

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