枝野幸男行政刷新相が誕生して約1ヵ月になる。若さと、事業仕分けで発揮された新鮮なイメージを期待されての登場だ。小沢一郎幹事長と距離を置いていることもあり、鳩山首相が小沢離れと国民受けを狙って起用したとの解説もある。
その枝野大臣が2月26日、閣議後の記者会見で、官僚に対して「大臣」と呼ばずに「枝野さん」と呼ぶよう要請したことを明らかにした。「『大臣』と呼ばれることに違和感を感じるところが民主党らしさだ」というのが理由である。
枝野大臣は地元選挙区の後援会でも、「先生」と呼ばれると、その場で「さん」付けにするよう訂正を求めるという。この謙虚さが大臣になっても失われていないという、一見すがすがしい話題だが、一歩間違えるととんでもない勘違いだ。
後援会なら枝野氏を支持している人たちだから、親密度を増すために「さん」と呼んでほしいと求めるのは理解できる。
しかし役所の場合、人間的には好きでないが、仕事と割り切って上司に仕えるという人も少なくない。そういう人は、「さん」で呼ぶことを大臣から強要されると、人間も好きになれと命じられているように感じるだろう。官僚から戸惑いの声が上がっているようだが、当然だ。
また、周囲の人が枝野大臣の意見を聞くのは、大臣個人の人間的魅力もあろうが、行政刷新相という肩書の持つ権力のためだ。それを誤解すると危うい。本当に謙虚になろうとするなら、むしろ「大臣」と呼ばせた上で、この人は俺に従っているのではなく大臣という権力に従っているのだと自覚したほうがいい。
大臣就任前から親しいなら、大臣になっても「さん」で呼ぶだろうし、就任後に心酔した人なら、大臣退任後でも終生「大臣」と言い続けるものだ(ちなみに、役所からあてがわれた事務秘書官は、枝野氏が大臣でなくなっても、死ぬまで「大臣」と呼ぶのが霞が関のお約束になっている)。
臣在任中に密接な人間関係を築けるかどうかは、ハードな仕事をしたかどうかで決まる。戦場で結ばれた絆が強くなるのと同じだ。
言うまでもなく枝野大臣に期待されているのは事業仕分けだ。枝野大臣は、実施対象に独立行政法人や公益法人を挙げ、公益法人については天下りを受け入れていること、国などからの公金を受け入れていることなどの7条件を満たすものを対象とすると明言した。
しかし、民主党のマニフェストでは、「特別会計、独立行政法人、公益法人をゼロベースで見直す」とある。特別会計はどうするのだろうか。まさか、対象にしないというのではあるまい。ここは、埋蔵金の宝庫だし、そのカネは霞が関ファミリーの天下り先の軍資金にもなっている。
さらに問題なのは、マニフェストにも書かれていない有力な天下り先である特殊法人の扱いだ。まだ32機関もあるし、なかでも政策金融機関と呼ばれる日本政策金融公庫、日本政策投資銀行、商工組合中央金庫には、大量の天下りがある。
中川秀直代議士が「天下り・渡りに関する質問主意書」を提出しているが、それに対する政府の回答が大変興味深い。役所の人事の一環として、整然と何代も同じ省からの出身者が続く様子が一目瞭然だ。
特別会計と特殊法人を事業仕分けしないでどうするのか。これらをうまくさばき、天下りがなくなれば、誰もが尊敬の念を込めて、永遠に「名大臣」と呼び続けるだろう。あ、まさか「大臣」と呼ばれたくないばかりに・・・。
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