AT&Tがついにネクストウェーブを買収 ~"電波利権の亡者"がたどった数奇な運命

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ネクストウェーブ社のHPより

 ここ1年、米国の通信業界では、電波利権をめぐる激しい戦いが繰り広げられている。スマートフォンやタブレットの普及で急速にモバイル・ブロードバンド需要が伸びる中、第4世代サービスの本命と言われるLTE Advanced用の周波数を確保しようと各社は必死だ。

 そうした中、AT&Tがネクストウェーブ(NextWave Wireless)を買収すると言うニュースが飛び込んできた。

「AT&T Agrees to Acquire NextWave Wireless, Inc.」

 日本には、ネクストウェーブをご存じの方はほとんどいないだろう。しかし、米国通信業界を長年歩いてきた私にとっては、もっとも感慨深い会社のひとつといえる。やや乱暴な言い方をすれば、同社は「電波利権の亡霊」ともいえる数奇な過去をもっているからだ。

ベンチャーに開放された無線免許

 電波利権を巡る戦いは、昨今始まったことではない。たぶん、無線免許競売が始まった1990年代にさかのぼるだろう。少なくとも、1995年前後のPCS(パーソナル・コミュニケーションズ・サービス)無線競売では、激しい戦いが携帯業界に巻き起こった。PCS競売は、音声に加えてデータ通信ができる第3世代サービスのために、無線免許を割り当てるオークションだった。

 当時、無線免許が資本力のある大手通信事業者に独占されているとの批判を受け、連邦通信委員会(FCC)は、一部の周波数を通信ベンチャーだけが応札できるルールを設定した。これがPCS『Cブロック』だった。

 この時、通信チップの大手クアルコム(Qualcomm)から独立したメンバーが中心になって、産声をあげたのがネクストウェーブだった。彼らの目的は、Cブロックの免許を獲得し、新しい携帯電話会社を設立することだ。

 創業者アレン・サルマシ(Allen Salmasi)氏の心には「米国初の携帯電話リセラー(再販事業者)を実現する」という夢が広がっていた。古巣のクアルコムのほか、韓国の浦項製鉄、ソニーなどから資金を集め、同社は1995年秋に開始されたCブロック競売に望んだ。

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