賢者の知恵
2012年08月13日(月) 週刊現代

週現スペシャル 稲川淳二 独占告白「私が愛する息子に死んでほしいと願った日々」

週刊現代
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 むしろ、障害には理解あるほうだと思っていたという。待望の次男が誕生。だが、その後の変わりように本人が一番驚いた。他人事ではない、どの家庭でも起こりうること。語り部の体験に耳を傾けよう。

恐ろしい想像

 生まれたばかりの障害を持つわが子を殺めようとし、思いとどまったタレントがいる。怪談でおなじみの稲川淳二氏である。ラジオDJを皮切りに、テレビのレポーターやお笑い芸人として一世を風靡し、その後、怪談の語り手として人気を得る。一方、通産省(当時)のグッドデザイン賞の受賞経験もあるデザイナーでもある。そのマルチタレントが、なぜ、わが子を手にかけようとしたのか? 昨年末には前立腺がん(初期)がわかり、今年2月に手術したばかり。全国35ヵ所をめぐる「怪談ナイト」ツアーの真っ最中で超多忙の中、話を聞いた。

*

 タレントとして一番忙しかったのは、30代から40代ですね。ラジオのレギュラーや、テレビの全国ネットの出演で、週に28本くらい出てました。休みもなく、働いてました。長男(俳優の貴洋氏)なんか、遊んでやる暇もなかった。

 '77年に結婚して同じ年に長男が、'86年に次男が生まれました。ちょうど30代の忙しい頃です。次男の出生直後に医者が「稲川さん、実はまだ赤ん坊になってない」って言うんですよ。「なんで?」って聞いたら、泣いてないと。「泣いたら赤ん坊になるんですね」って念を押したら、そのうち泣いた。

 ところが女房が「この子、少しおかしい。黒眼が上にあがっちゃって、白眼ばかりむいてる」って涙ぐんでる。それであちこち医者に診てもらったんですが、「別に問題はない」って言われたんですよ。ところが女房は「そんなはずはない。絶対これは問題がある」って言うもんですから、別の病院で診てもらったら、クルーゾン病だった。

〈クルーゾン病は、先天性の頭蓋骨の形態異常で、発話ができず、外見的には顔面の歪みや眼球突出などの特徴を持つ。鼻咽腔発育不全による呼吸障害などを伴い、水頭症を合併することもある。患者によって症状は異なり、稲川氏の次男の場合、視覚、聴覚、知能にも障害があった〉

 生後4ヵ月で手術することになったんですが、電話口でそのことを告げる女房は、泣き声でした。普段泣かない、あの気の強い人がですよ。「手術をしても、もしかすると助からないかもしれない。助かったとしても一般の人と同じ生活はできないかもしれない」っていうようなことを言ったんですよ。

 目の前がぱーっと白くなってね。あの言い方だと、死ぬか、あとは障害を持って生きるしかないじゃないですか。

 これは違う。現実じゃない。自分の子供にこんなことがあっちゃいけないと思ったんですよね。その頃、クルーゾン病は、10代半ばぐらいまでしか生きられないっていう情報しかなかった。長い付き合いはできないな、その間、大事にしてあげようかな、早くに逝くんだったら、あまり情をかけないほうが幸せなのかな、そんなことを考えました。

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