行政・自治体
岩瀬大輔が緊急寄稿!3.6兆円の予算規模で5000万円の補助金に執拗にこだわるのは単なる政治的パフォーマンス。論理的に破綻している橋下市長はそろそろ文楽問題を着地させたらどうか

文:岩瀬 大輔(ライフネット生命副社長)

 文楽への補助金凍結を表明している橋下大阪市長。7月26日に二回目の鑑賞を行い、終了後に技芸員の楽屋を訪れるなど、歩みよりの姿勢を示しているものの、これまでの言動と整合性のある落とし所を探しあぐねているようにも感じる。

 そこで、10年来の文楽ファンとして、一般に正確に伝わっていないこの問題の本質を解説し、これからいかにしてソフトランディングしていくべきか、どのようにこの問題を解決させるかを提案したい。以下、Tweetを再整理したものであることはお断りしておく。

文楽は「衰退」しているのか?

 橋下市長「文楽は衰退した」というが本当か。東京公演は毎回チケットが完売し、チケットが取れずに困っている人がたくさんいる。さらに大阪公演はピーク時で「10万人オーバー」、直近では9万2千人を動員。東京の8万人弱を上回る。

 そもそも東京の観客動員率が85~90% に対して、大阪は52%ということならば、単純に「文楽が大衆の感覚から離れて衰退した」では説明できない。主な理由は

1.大阪の需要が減った(景気が悪いので娯楽費が減ったのか?)

2.大阪公演が多い(大阪188 回vs 東京132回)

3.大阪の劇場が大きい(大阪753席 vs 東京590席)

以上のように考えるべきではないか。

 例えば、この10数年で大阪のGDPは縮小している。一人当たり娯楽費も減るのはやむを得ない(大阪府、あるいは関西圏としても話は同じ)。

 同じ技芸員たちが同じような演目をやっていて、東京では繁盛していて大阪では閑散としている。これを「特権意識をもっている人たちが大衆の心から離れたため文楽は衰退した」と説明するのはまったくロジカルではない。全体の仕組みの問題と考えるべきだ。

文楽事業の構造

 全体像を俯瞰しよう。ネタ元は、大阪市特別参与である池末さんのメモ。よくまとまっている。

 文楽に関わる主体は3つ。

1.国=日本芸術文化振興会(振興会)

2.文楽協会

3.技芸員(通称、文楽座)

 振興会は事業規模約200億円、職員数約300人、人件費約30億円。文楽協会は職員数12人、人件費7250万円。うち3名が市府OB。文楽座は技芸員82名、収入約5億円。平均約600万円。

 文楽協会と技芸員(文楽座)は、密接な関係にはあるが、別のグループだと理解した方がよい。文楽協会は近鉄グループ会長を理事長とし、事務方トップ3名は府・市のOBとする、たった12名の組織だ(3名が今年定年退職なので実際は9名しかいない)。3名のOBと、6名のスタッフ(うち4名は82名の技芸員たちのお世話係)で細々と、いや必死に運営している小さな所帯だ。