賠償コストを極小化し原発再稼動を強行する国家的詐欺行為を許すな! 「不都合な真実」を隠し続ける政府と「東電国有化の罠」
原発再稼動よりも優先されるべきは賠償保険制度の見直しだが・・・〔PHOTO〕gettyimages

 「賠償や廃炉のためにどれぐらいのお金がかかるのかということについては、いまだ確たる見通しを立て得ない状況であります」---。

 国民に重い負担を強いるリスクに目をつむり東電国有化を強行したにもかかわらず、枝野幸男経済産業大臣はその日(7月31日)の記者会見で、賠償、除染、廃炉という福島第一原子力発電所事故の処理にいくらの費用がかかるのかという肝心の情報の公開を改めて拒否した。

 詳細は拙著『東電国有化の罠』を参照いただきたいが、これは、東電国有化の先行きの危うさを隠蔽しようとするだけでなく、福島第一原発事故の被害者に対する賠償を極小化し、コストをかけずに原発の運転再開を強行しようとする国家的詐欺行為として、長く後世に語り継ぐべき問題ではないだろうか。

 「返済の優先順位が高い社債を膨大に発行しており、東電を潰したら、被害者に賠償をする主体がなくなってしまう」---。

 民主党の政治家、経済産業省、財務省、金融庁の官僚、メーンバンク、そして東電自身といった東電国有化を推進してきた人々が、資本主義の大原則を無視して、その正当性の理論的な拠り所としてきたのが、このいっけんもっともらしい屁理屈だ。

 賠償、除染、廃炉は、原子力損害賠償支援機構から公的資金を借り入れて、東電が行う。東電は、時間をかけて、毎年の稼ぎの中から借りた公的資金を返済していくスキームとなっており、東電を国有化して公的管理下に置くことで、その履行を監視することになっている。

原賠保険制度の見直しよりも優先される再稼動

 しかし、そもそも、このスキームの前提となった昨年10月の「東京電力に関する経営・財務調査委員会」(委員長・下河辺和彦弁護士、現東電会長)の調査報告書が杜撰だった。鳴り物入りの第3者委員会報告として野田佳彦首相に提出されたものである。

 この中には、賠償、除染、廃炉のコストがそれぞれ4兆5,402億円、ゼロ(見積もり不可能)、1兆3,243億円(1~6号機合計)と記されていた。が、賠償だけ検証してみても、政府の航行、飛行禁止措置に伴う船会社や航空会社の損害、上下水道の汚染被害など見積もられなかった被害が多岐に及ぶ。

 見積もった賠償も事故から2年分しかカウントしておらず、実態とは大きくかけ離れている可能性が高い。除染コストのゼロはあり得ないし、廃炉のコストも大筋が設計寿命が到来して正常に廃炉できるケースを念頭に置いた試算に過ぎない。

 つまり、それぞれが極端な過少見積もりであることが明らかなのだ。誤解を恐れずに言えば、それぞれが10~100兆円単位に達しても不思議は無い。

 一方で、東電は、昨年度(2012年3月期)決算で、原子力損害賠償支援機構からの交付金(2兆4,262億円)を特別利益に計上したにもかかわらず、7,816億4,100万円の連結最終赤字を記録した。

 加えて、今月(8月)1日に公表した2013年度第1四半期(4~6月)決算は、2,883億円の連結最終赤字を記録した。2013年度全体でも巨額の最終赤字が続くのは確実で、公的資金を注入して増強したばかりの自己資本の食い潰しや、資金繰りの再度のひっ迫が懸念されているのだ。

 これらの状況を見れば、賠償、除染、廃炉のコストを最新データに基づいて精査し直し、福島第一原発事故の被害と処理の費用の実態を明らかにすることは、国有化後の東電の経営や、迅速な事故処理、それに伴う国民負担の推計などに必要なことは明らかだろう。

 さらに、もうひとつ重要なことがある。今後、原発事故が発生した場合に備えて、原発の再稼働の前に、賠償保険制度を見直すことだ。福島第一原発事故の被害、賠償のデータ、もしくはより精緻な試算の公表は、その賠償保険制度の再構築のためにも不可欠である。

 それなのに、そうしたデータや試算を開示しないのは、原子力発電のコスト上昇に繋がる原賠保険制度の見直しを有耶無耶にしておいて、原発の再稼働を優先しようと政府が目論んでいることの証左としか言いようがない。

 こうした中で、政府は先週(7月31日)、東電に1兆円の公的資金を投入して50.11%の議決権を取得し、東電国有化を強行した。十分なデータを開示せず、血税を回収リスクにさらしただけでも罪深い。

 ところが、今回、記者団の再三の質問にもかかわらず、枝野大臣は7月31日の記者会見で、

 「特に除染や廃炉については、本当にどれぐらいかかるのかという見通しを今の段階で立てると、かえってミスリードするというふうに思います」

 「廃炉や賠償の総額が今具体的な見通しを確たるものとして立てられない状況でありますので、どの程度の時間がかかるのかということを今予断を持たない方が適切だ」

 などと述べ、繰り返し、原発事故の処理費用の実態を開示しない方針に拘り続けた。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら