ムカつく相手はネットで写真公開、校門前で威嚇 大津いじめ自殺事件とネット社会の病理 いじめたヤツをいじめる、この国よ

2012年08月09日(木) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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 いずれもインターネットの掲示板に躍っている。発信者はむろん匿名で、いじめの加害少年とその親に罵声を浴びせている。

 そしてネット上には、3人の加害少年の実名と顔写真、さらに親の実名と顔写真がまとめてアップされている。ご丁寧に、加害者の父親の自宅から勤務先までの通勤経路を書き込んだ地図までが掲載されている。

電凸ってどういう意味?

 本誌記者が現場で聞いた声と、インターネットに溢れる匿名の罵声。事件について語っているという一点では同じだが、両者の間にはあまりにも大きな隔たりがある。

 孫を失った後も番台に座り続ける祖母の、身体性をともなう哀しみ。

 まったく無関係の匿名の人々がまき散らす、インターネット上での怒り。

 どちらに重みがあるか、論じるまでもないだろう。

 だがこの国ではいま、後者の怒りの炎が猛烈な勢いで広がり、前者の切実な哀しみは、すっかり置き去りにされている。

 ネットの書き込みはさらにエスカレートする。

〈加害者の父親が元警察官ならしょうがねーよな〉

〈加害者のAおよびB(ネット上では実名)は、在日コリアンと判明した!!〉

 いずれも事実とは異なる情報だ。だが、こうした誤報がまたたく間に拡散し、さらにバッシングが繰り広げられる。写真と実名だけでなく、生年月日と身長、血液型、そして自宅や親の職場の電話番号、メールアドレスまでもがネット上で晒されている。

「凸」というネット用語をご存知だろうか。凸=突撃を意味する。

「ネット上で晒されたこれらの情報に基づき、いきなり押しかけて抗議することを凸と言い、電話で文句を言うことは『電凸』と呼ばれます」

 そう解説するのは『ネットと愛国』の著者・安田浩一氏だ。安田氏は同書で、ネットの書き込みやデモで在日コリアンのバッシングを行う「在特会(在日特権を許さない市民の会)」の実態をレポートした。安田氏が続ける。

「大津の事件の後、私のところにも取材で知り合った在特会の会員や元会員から次々と電話がかかってきました。

『加害者の親は在日だと聞いています』

『さもありなん、という事件ですよね』

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