風雲急を告げる不信任案採決は「戦後政治史の奇跡」になるのか。野田民主、谷垣自民の動きを「三体問題」として考える

 古典的な物理では、太陽と地球のような二つの天体にそれぞれが万有引力で相互に作用する場合を2体問題といい、これは比較的容易かつ厳密に軌道の解がわかる。ところが、太陽と地球に月を加える3体問題になると、それぞれの軌道の解を出すのが格段と難しくなる。

 もちろんコンピュータ・シミュレーションで実際上支障のない範囲で近似的な解を求めることはできるが、厳密な解は一般的には求められない。3体問題では、場合によって予測不可能な複雑な動き(カオス)にあることもある。

 これと似たような話が政治でもある。

本来は選挙で勝って増税を実現すべきだった自民党

 再三にわたって本コラムで紹介してきたが、民主と自公が増税翼賛会になって、消費税増税法案が衆院を通過した。野田佳彦首相と谷垣禎一自民党総裁は、財務省が生んだ増税双生児ともいえる人たちなので、あうんの呼吸で消費税増税法案を仕上げてきた。

 谷垣自民は本来であれば、消費税増税に賛成であっても選挙に勝って政権党に返り咲いてから増税をすればいい。そのためには、野田民主の増税はやり方が違うといって、政権を追い込めばよかった。野田首相は政治生命を賭けているのだから、解散総選挙せざるを得なかったはずだ。この場合、野田民主と谷垣自民の2体問題でみれば民主がはじかれるという解だっただろう。

 ところが、増税双生児のゆえに、谷垣自民は消費税増税を成立させてから解散総選挙という路線をとった。これは普通の人なら理解できないが、谷垣自民への財務省の教育の賜だろう。消費税増税のように国論を二分する問題は、正々堂々と選挙で国民に訴えてから行うべきだ。

 しかも解散総選挙は野田総理の専権事項である。誰も「確約」をさせることなどできない。まして、総選挙時のマニフェストを破ってまでも消費税増税する野田首相相手では、増税は約束できても解散の「確約」には何の担保もない。

 というわけで、野田民主と谷垣自民の2体問題は、野田民主が太陽で、谷垣自民は民主を補完し太陽の回りを回る地球ということで落ち着いたかのように、少なくとも2週間前には思えた。

 谷垣自民は、民主の谷垣グループのような存在だ。それでも、増税に賛成したお裾分けはある。消費税増税増案の附則18条を根拠とするバラマキ公共事業だ。この2体問題をみると、野田首相も谷垣総裁も、ともに9月の民主代表選、自民総裁選で再選されるというシナリオだ。

 参院でも公聴会が8/6(月)、7日(火)に設定された。公聴会設定日というのは国会審議プロセスで重要だ。役人時代、ここまで来るとほっと一息という感じだった。というのも公聴会以降、採決できるようになるからだ。自民はお盆前採決を主張して会期内解散総選挙の可能を探り、民主がお盆後の採決を主張し会期内解散総選挙の可能性を消そうとして、2体問題を発展させていた。

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