[柔道]
近藤隆夫「ジュリー制度について思うこと」

~五輪・柔道を観た後で~

前代未聞の旗判定変更

審判の問題がクローズアップされた中、銅メダルを獲得した男子66キロ級の海老沼。

「ジュリー制度」が批判を浴びている。ロンドン五輪・柔道競技の話である。

 この「ジュリー制度」とは、誤審を避けるために設けられたもの。主審、副審以外に畳の外に審判委員(ジュリー)を配置、時にビデオも用いて試合のチェックを行うのである。

 柔道の試合では審判が瞬時に判断しづらい状況が生じる場合がある。たとえば、先に仕掛けた選手の技が有効なのか、それとも、それを返した選手の透かし技が有効なのか。そんな微妙なシチュエーションでは、ジュリーが審判のジャッジが正しいか否かをビデオを見返しながら判断するのだ。実は、この制度は2007年から導入されていたのだが、今回のロンドン五輪でのひとつの出来事から注目されるようになった。

 男子66キロ級の準々決勝、日本の海老沼匡vs.韓国のチョ・ジュンホ。試合はゴールデンスコア方式の延長戦に持ち込まれ、それでも決着はつかず。旗判定はチョに3本。この直後、ジュリーが審判を集め、判定のやり直しを命じた。

 チョの勝利を告げる青旗がスッと3本あがった時、私は「エッ!」と声を出さずにはいられなかった。どう見ても試合を優位に進めていたのは海老沼だったからである。延長に入って1分20秒過ぎ、海老沼が見舞った小内巻き込みは1度は「有効」とコールされる。これはジュリーの指摘により、取り消されたが、判定上で大きなポイントになったはずだ。

 その後の展開でも海老沼が流れを支配していた。もちろん「エッ!」と驚いたのは私だけではない。判定が下された直後、場内はブーイングに包まれていた。

 判定のやり直し。今度は海老沼の勝ちを支持する白旗が3本上がる。判定が正しくなされた、と私は思う。だが、試合場周辺にいた関係者は皆、唖然としていた。旗判定のやり直しなど前代未聞である。一度、審判が下した判定が覆るなどということも、これまでの五輪柔道で1度もなかったからだ。

「審判が一度下した判定を覆してよいのか?」
「技の有効性を問うのならともかく、ジュリーが旗判定にまで口出しをしてよいのか?」
「そもそもジュリーの権限が審判を超えることがあっていいのか? これでは主審がジュリーのロボットになってしまう」
「こんなことをやっていては混乱を招くばかりだし、審判のレベルがさらに低下してしまう」

 ジュリー制度は一気に批判を浴びてしまったのだ。