国民はもはや政府を信用していない! 原子力規制委員会の人事は国会事故調の提言を尊重して国会主導で決めるべきである! 
7月16日、代々木公園で開催された「さようなら原発10万人集会」〔PHOTO〕gettyimages

 政府が新設する新しい原子力規制委員会の人事案がもめている。当然だ。

 委員長候補の田中俊一は原子力委員会委員長代理や日本原子力学会会長、日本原子力研究開発機構副理事長などを務めた、バリバリの原発推進派である。「原子力ムラの村長さん」とか「ミスター原子力ムラ」とも呼ばれている。

 その呼び名にふさわしく、たとえば低線量被爆リスクについて「100mSv(ミリシーベルト)は健康に大きな影響がない。このあたりをどう今後、住民に折り合いをつけていただくかが大変、大事」(2011年8月23日、第32回原子力委員会議事録)などと、住民の気持ちを逆なでするような発言を繰り返してきた。

 食品汚染についても、驚くべき発言がある。肉や魚について政府は当初、1キログラム当たり500ベクレルという異常に高い暫定規制値を設けて国際的にも批判を浴びた。その後、12年4月1日から100ベクレルに下げたが、田中は引き下げに反対していた。

 11年12月12日に開かれた政府の「第7回低線量被爆のリスク管理に関するワーキンググループ」では、次のように語っている。

 「1キログラム当たり500ベクレルの基準値で十分安全であり、100ベクレルにすれば流通できない食品が増えてくる。それは社会的、経済的損失はもちろんですけれども、それによって国民の不安はどんどん大きくなっていく。もうひとつ、私は心配なんですけど(暫定規制値の引き下げに伴って耕作の規制値も低くすれば)非常に広範囲の地域で耕作制限がされることになる」(政府インターネットテレビ参照)

 規制を厳しくするのはとんでもない、と反対していたのだ。

「政府内の推進組織からの独立性」はどこへ?

 委員候補である中村佳代子は日本アイソトープ協会の主査。更田(ふけた)豊志は田中が副理事長を務めていた日本原子力研究開発機構の原子力基礎工学研究部門副部門長だ。両氏とも前職とか元職ではなく現役である。大島賢三元国連大使は国会事故調査委員会の委員を務めていた。もう1人、島崎邦彦は元東大地震研究所教授で地震予知連絡会の会長である。

 この5人のうち田中と中村、更田の3人は経歴や過去の発言からみても、あきらかに原子力ムラの住人だ。もともと規制委は原子力ムラの影響力を断ち切るのが狙いだったのだから、本来の趣旨に背く人事案であるのは議論の余地がない。

 中村、更田の2人は新たに制定した原子力規制委員会設置法にも違反している。同法第7条7項には「次の各号のいずれかに該当する者は委員長または委員となることができない」として次のように定めている。

 三、原子力に係る製錬、加工、貯蔵、再処理もしくは核燃料物質の使用を行う者またはこれらの者が法人であるときはその役員もしくはこれらの者の使用人その他の従業者
四、前号に掲げる者の団体の役員または使用人その他の従業者(一部略)

 この条文に照らすと、中村が勤める日本アイソトープ協会は研究・医療系の放射性廃棄物の集荷、貯蔵、処理をしている団体であり、中村は上記三の欠格要件に該当する。同じく更田が勤める日本原子力研究開発機構は高速増殖炉もんじゅを設置して使用済み核燃料の再処理をしており、更田も三に該当する。

 田中はどうかといえば、中村、更田両氏と違って前職、元職だから直接、欠格要件に該当しないものの、ほとんどアウトに近いといっていい。

 こうした理由から、たとえば脱原発弁護団全国連絡会は田中と中村、更田の3人について人事案の撤回を求めている。だが、真の問題は実は3人にとどまらない。

 この3人が「法の欠格要件に該当するからダメ」というのは、たしかにパワフルな主張である。だが、国民の目から見ると本来、政府が密室で決めた人事案を国会に出すというプロセス自体が問題ではないか。

 野田佳彦政権はほとんどデタラメに近い基準をつくって関西電力大飯原発の再稼働を決めた。脱原発を進める気があるのかどうか、極めて疑わしい。そんな政権が規制委の人事案を出しても、自ずから原発推進派で固められるのは自明である。

 こういう事態を予想して、国会の事故調査委員会(黒川清委員長)は先に出した報告書で「新しい規制組織」について「政府内の推進組織からの独立性」を最初に必要条件として指摘したうえで、透明性を高めるよう提言した。具体的には「委員の選定は第三者機関に一次選定として相当数の候補者の選定を行わせたうえで、その中から国会同意人事として国会が最終決定するといった透明なプロセスを設定する」よう求めている。

 この提言に従えば、まず第三者による委員選定委員会をつくる。そこが複数の候補を選んだうえで、国会が最終決定する仕組みになる。多くの国民は、もはや政府を信用できない。だから「国会が選ぶべきだ」という話なのだ。

 私はこれに同意する。政府に候補選定を委ねていたら、仮に3人の人事案が撤回されたとしても、またまた原子力ムラ、あるいはその隣村から候補が出てくるのではないか。結局、事態は本質的になにも変わらない。

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