「福島千里は体重を増やせ」「ディーンは真上にヤリを投げろ」「北島はマグロ体型に」ロンドン五輪が10倍面白くなる
「金が獲れる物理学」

「根性で練習さえすれば何とかなるといって筋肉を痛めるくらい練習をする、これは無駄だと思います。トレーニングでつけた筋力をどうやって有効に活かすかを習得すべきです。この時、抵抗や摩擦力を考えることが重要になってきます」

 愚直な練習だけではなく、物理学を用いた成績向上を提唱するのは、7月20日に『オリンピックに勝つ物理学』(講談社刊)を上梓した、東洋大学理工学部の望月修教授だ。望月教授は '80 年代後半にスキージャンプ日本代表チームからの依頼で飛行姿勢の解析に取り組んで以来、20年以上、物理学とスポーツの研究に従事してきた。ロンドン五輪必勝の科学的「金メダル奪取法」を見ていこう。

図1
地上で人が移動する時、体には図1の4つの力が作用している。地面からの反力である推進力を高めるためには、体重と摩擦力が鍵となるのだ

(1)短距離走は体重を増やせ

 これまでに金メダルを獲得した日本人選手がいない、短距離走の勝利の鍵は「摩擦力」だと望月教授は語る。

「ポイントとなるのは、地面との摩擦力をいかに大きくするか。地面が氷のようにツルツルだと、いくら地面を蹴っても滑ってしまうように、摩擦がないと前に進めないわけです。摩擦力というのは体重と蹴る力の和に摩擦係数を掛けたものです。選手はこの蹴る力を鍛えることばかり考えがちですが、同時に、体重を大きくすることも重要です。また、地面に対して足を73度(摩擦係数が0.3の場合)の角度で蹴ることで持てる力を最大限に推進力として転用できる」

 選手の出すスピード(図1の推進力)は、自分の体重から生じた反力から生み出されるのだ。この蹴る力と、83kgの体重という二つを兼ね備えたウサイン・ボルト選手(25・ジャマイカ)が好記録をマークし続けるのも必然というわけだ。

「'08年の北京五輪で日本女子選手として56年振りに100mの代表になった、福島千里選手(24・北海道ハイテクAC)は50kg台の体重です。もし福島選手が体重を10kg増やせば、60kg台の体重で、 '88年のソウルオリンピックで3個の金メダルを獲得した、ジョイナー選手(アメリカ)と同じくらい走れる可能性はあります」