メダル獲得が有力視される3人は、こうして強さを積み重ねてきた 柔道ニッポン肉親・恩師が明かす「努力の天才」の育て方
さあ 開幕!ロンドン五輪

フライデー

〝楽しみ〟と〝創意工夫〟

九州の3つの大会で優勝を果たし、祝賀会に出る穴井少年(前列右から2番目)。小学6年生当時から体格の良さが目立つ

 スタートこそつまずいたが、その後は自身でも認めるように〝柔道人間〟となった穴井。それには山中さんの指導方針も大きく関係していた。

「うちは〝楽しい柔道〟を目指しているんです。だから、入門してきた子に最初から柔道を教えるのではなく、まずは上級生と組ませて、先輩たちにはわざと大げさに投げられてもらう。そうすると初心者でも気持ちがいいものだから、柔道にのめり込んでくれるようになるんです」

 興味を持たせた後は、受け身や技の型などを少しずつ教えていく。まだ体力のない子供に、ゆっくりと時間をかけて柔道の真髄を教えていくのだ。

「小学2年生くらいになると、色々と穴井には違いが出てきましたね。当時、福岡国際女子柔道大会に、ヤワラちゃんこと田村(現・谷)亮子選手が出場する時などは、お父さんに毎日のように連れて行ってもらっていました。そこで大会のプログラムを買っては、どの選手がどんな技で勝っただとかを全部細かく書き込むんですよ。ただボーっと見ているだけではなく、何かを吸収しようとする。とにかく熱心でしたね」

 小学2年生にして、穴井の愛読書は『近代柔道』という専門誌。世界中の柔道選手の名前を覚えるほか、知らない技をどんどん頭に入れて研究していたという。当時から、勝つための術を自分の頭で考える習慣が身についていたのには、山中さんのこんな教えが影響している。

「うちは柔道の基本であり、最大の目標である『一本を取る』ということを大事にしている。美しさを無視して力任せに技をかけてくる外国人の柔道とは別物なんです。相手にきれいに勝つためには、しっかりと頭を使って技を出すことが必要。特に、うちは他の柔道クラブと比べて、練習時間が短いだけにいつも教え子たちには『頭で考えなきゃダメだ。創意工夫だぞ』と言ってきました」

 7月22日、穴井はロンドン入りして「金メダルに向け、身が引き締まる思い」と意気込みを語った。山中さんの日本柔道に対するプライドと『創意工夫』の精神は、しっかりと受け継がれている。

「フライデー」2012年8月10日号より

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