ドイツ
子どもを家で育てたら補助金がもらえる!? ドイツの出生率改善には、お金よりも託児所の整備が必要なのだが・・・。
ドイツでも託児所の不足が問題になっている〔PHOTO〕gettyimages

 バイエルン州というのは、ドイツ国の南東の端を占めている大きな州で、ミュンヘンが州都。産業の盛んな優良州のひとつで、他の多くの地域に比べて景気も治安もよく、教育程度は高く、お金もある。しかし一方で、皮の半ズボンに鳥の羽の付いた帽子という、世界にはびこっているドイツの伝統的イメージが実際に息づいている保守的な土地柄でもある。世界一のビール祭、オクトーバーフェストがバイエルン州のお祭りなのは偶然ではない。

 バイエルン州にはCSU(キリスト教社会同盟)という政党がある。ドイツの第一党CDU(キリスト教民主同盟)の姉妹党だ。CSUはバイエルン州にしかなく、CDUはバイエルン州にだけにはない。つまり、この2つの政党はセットになっている。ただ、だからといって、CSUが全国一の党であるCDUの言うことを素直に聞くかと言うと、そうはいかない。

 CSUの特徴を一言でいえば、中道保守のCDUよりさらに保守的で、しかも、ひんしゅくを買いそうな意見でも遠慮なく主張するバイタリティーがあることだ。党首はゼーホーファーという大男で、生粋のバイエルン人。CSUの政治家は皆、バイエルン州に大いなる誇りを持っており、全員がバイエルンの方言丸出しで政治を行うのが特徴だが、ゼーホーファー氏も例外ではない。ちなみに、彼はバイエルン州の州知事でもある。

 いずれにしても、CSUはバイエルン州では圧倒的に強いので、鼻息が荒い。国全体がとっくに文明開化したのに、頑固にちょん髷を切らずに頑張っている感じだ。

子ども手当に、さらに上乗せされる補助金

 前置きが長くなったが、その反動的なCSUの主張のひとつに"子育て金"の導入がある。子どもを託児所に入れない親に補助金を出そうという案だ。

 予定額はかなり大きい。まず2013年、2歳の子どもへ各月100ユーロの支給から始まり、14年にはそれを3歳児にまで拡大し、各月150ユーロの支給となる。これが国家予算にどう響くかというと、13年は4億ユーロ、14年からは12億ユーロの支出となるらしい。

 誤解のないように言い添えるが、これは、子ども手当とは別物だ。子ども手当は0歳から19歳未満のすべての子どもに与えられる。しかも、子どもが18歳になっても独立せず、大学へ行ったり、職業訓練中であったり、インターンや社会福祉ボランティアに従事していたりする場合は、25歳まで延長される。

 現在の金額は、1人目と2人目の子どもに毎月184ユーロ、3人目は190ユーロ、4人目からは215ユーロ。我が家の場合、娘は3人とも20歳を超えているが独立していないので、184ユーロが2人分、そして、3人目の190ユーロと、毎月、計558ユーロの補助が出ている。大変ありがたい。トルコ人などイスラムの家庭は、その倍ぐらい子どもがいることも多く、ほとんどこれだけで食べていけそうなほどだ。つまり、前述の子育て金というのは、この潤沢な子ども手当に、さらに上乗せされる補助金となる。

 子育て金をめぐっての議論はすでに長い。野党が反対しているだけでなく、与党の中でも反対者が多い。主な反対理由は、こういうものを支給すると、そうでなくても困難な外国人の統合政策が、さらに後退してしまうというものだ。

 現在の外国人問題、あるいは移民の問題は、多くの子どもがドイツ語ができずに小学校に上がることから始まっている。ドイツ語ができないから落ちこぼれ、義務教育以上に進めず、当然のことながらろくに就職もできない。ドイツ語さえできれば、ドイツの教育を存分に享受し、本人のやる気と能力次第で大学にまで進むことができる。ドイツでは、教育自体には小学校から大学まで、ほとんどお金がかからない。

 だから、ドイツ政府はここ数年、できるだけ多くの外国人労働者の家庭の子どもに、託児所や幼稚園でドイツ語を習得させることを奨励してきた。ところが、子育て金が導入されれば、このメリットをもっとも必要とする子どもたちが、お金のために家庭に留め置かれる可能性が高くなる。これは、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンなど、同様の補助金を支給したことのある国で、はっきりと証明されているという。

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