サッカー
二宮寿朗「松田直樹の悲劇から1年 広がる救命の輪」

 元日本代表ディフェンダーの松田直樹が練習中に倒れ、急性心筋梗塞で天国に旅立って1年が経とうとしている。

 命日の8月4日には横浜F・マリノスでチームメイトだった久保竜彦の引退試合(金沢)が行われ、松田にゆかりのある選手たちが集まって「AED(自動体外式除細動器)普及マッチ」が開催される。試合前には指導者、保護者に対して心臓マッサージ、AEDの講習会が実施される。翌5日には松田が最後に所属した松本山雅FCでも写真パネルの展示やメモリアル映像の上映、社団法人「松田直樹メモリアル」によるAED寄贈などが行なわれる。マリノスも3日、4日にかけてメモリアル写真の展示、メモリアルフラッグへの記帳などを行う予定だ。故人を偲ぶとともに、救急対応の必要性を伝えようとしている。

AED常備を義務付け

 松田は2011年8月2日、ランニング後に倒れて心肺停止状態となり、グラウンドで人工呼吸と心臓マッサージが施されるなどして病院に運ばれたが、意識は回復しなかった。この日、チームが使用したグラウンドにはAEDが設置されていなかった。動脈(血管)がふさがれることによって発症する急性心筋梗塞であっても、AEDがあれば一命を取りとめていた可能性がゼロではなかったと指摘する声もあった。

 松田を心配して多くの選手、関係者、ファンが病院に駆けつけ、みんなが彼の回復を願った。あの日、夜がとてつもなく長かったことを思い出す。

 願いはかなわなかった。奇跡は起こらなかった。松田直樹は戻ってこなかった――。

 あれから1年。

 日本サッカー協会は松田直樹の悲劇を繰り返してならないと、今年度からJFLなど(Fリーグ、なでしこリーグ)に試合や練習におけるAED常備を義務付けることを決めた。Jリーグでは2003年のコンフェデレーションズカップでカメルーン代表のマルク・ビビアン・フォエ(享年28歳)が亡くなったことを機に義務づけていたが、Jリーグ入りを目指すクラブ、企業のアマチュアチームなどが混在するJFLでもようやく「義務化」が決まったのだった。AEDはひと昔前まで1台100万円ほどしていたが、今では20~30万円ほどで入手できるそうだ。JFLを皮切りにして、AED普及の輪は確実に広がりを見せているのではないだろうか。

 また、AEDの使い方を含めて、突然、心臓の発作で倒れた人がいた場合の対処について「講習会」も行なわれるようにもなってきた。

 Jリーグのクラブで例を挙げれば、川崎フロンターレでは昨年に2度、AED講習、救急講習を実施している。また松田が所属したマリノスでもAED講習が行なわれている。「松田メモリアル」は心臓マッサージとAEDによる心肺蘇生の講習を展開する「PUSHプロジェクト」に参加しており、今後は活動を活発化させることになりそうだ。

 春秋制を採用しているJリーグ、JFLでは真夏でも試合を開催しているのが現状である。過酷な試合環境のなかで選手、スタッフ、関係者、ファン、サポーターなどあらゆる人が、AEDを含めた救急の知識を持っておくことは大切だろう。あちこちで定期的に「講習会」が開催されていけば、その輪はもっと広がっていくに違いない。