東北発の景気回復で日本はデフレを脱却できるか!? 復興予算18兆円の浸透と銀行預金の減少がもたらす経済波及効果
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 厚生労働省が7月31日に発表した6月の有効求人倍率は前月比0.01ポイント上昇し、0.82倍になった。有効求人倍率は、仕事を求めている人1人に対して、企業から何人の求人があるかを示す数値で、景気の動向を表す。まだ全体としては1倍割れで、雇用環境は厳しい状態が続いているとはいえ、昨年6月以来13ヵ月連続の改善となった。

 数値の底上げに貢献しているのが東北地方。東日本大震災で大きな被害を受けた後、復興に向けた公共工事などが大幅に増加したことから、求人が増えている。宮城県は1.14倍、福島県は1.01倍、岩手県は1.00倍と、いずれも1倍を超えており、全国的にみて東北地方での人手不足感が強まっていることを示している。

 被災地の復興に関しては、昨年度予算の1次~3次補正と、今年度予算を合わせて18兆円を計上している。復興事業の本格化でこの巨額予算が地域に浸透し始めている。東北地方では公共事業のみならず、住宅建設などの民間建設需要も増加。建設関連分野で資材不足や人手不足が顕在化しつつある。東北発の景気回復が始まりつつあるとの見方が広がっている。

公共事業に加えて民間の住宅建設も増加傾向

 資材不足で顕著なのが生コンクリート。社団法人セメント協会が発表した6月の地域別セメント販売量は、東北地方が32万9000トンあまりと、前年同月に比べて46.6%も増加した。とくに宮城県での需要増が著しく、前年同月の2.1倍に急増している。

 生コンの需要急増は、被災地での復興事業の内容が、これまでの瓦礫処理などの段階から、道路や堤防、建物の基礎といった建設土木工事に比重が移っていることを如実に示している。

 復興工事の現場では生コンの不足が工事の遅れにつながりかねない、という懸念が強まっている。岩手県宮古地区だけでも生コン約30万立方メートルが今年度、不足すると試算。山本正徳市長は6月の段階で、国などに対策を要望した。国土交通省は生コンの原料である砂利や砂を北海道など東北地方以外で調達して海上輸送することを決めるなど対策に乗り出している。

 東北地方の需要増が、セメントの受給を一変させた。震災前までは、民主党が掲げた「コンクリートから人へ」が象徴する公共事業の削減が世の流れだった。セメントの販売量をみても、2009年度は前の年に比べて14.6%減、2010年度は同2.2%減だった。ところが、震災以降は一転して需要が増加。2011年度は2.1%増加した。増加ピッチが顕著になったのは今年5月ごろから。5月は全国平均で19.3%も増加。6月も3.6%増えた。もはや需要に供給が追いつかない状態になっている。

 東北地方での工事増加は公共事業だけではない。民間の住宅建設にも火が付き始めた。国土交通省の都道府県別新設住宅着工戸数の推移をみると、今年の4月あたりから民間住宅の再建が本格的に始まったことが分かる。宮城県の場合、震災前は多くてもひと月に1300戸から1400戸だったが、今年4月には1763戸、5月には1583戸に達した。岩手や福島でも同様の傾向が見える。

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