アダム・スミスの「生きるヒント」 第6回
「やはり『結果がすべて』なのか!?」

第5回はこちらをご覧ください。

 アダム・スミスは、人間を「賢人」と「軽薄な人」に分けました。「賢人(正しい人間)」になるためには、つまり正しい判断をするためには、自分の中に作り上げた「裁判官」の判断に従わなければならない。それがスミスの主張でした。

 しかし、ここに一つの壁がありました。

同じプロセスを踏んでも結果が変わる ~不規則な結果

 同じプロセスを踏んでも、違う結果が出ることがあります。努力しても結果が出ない時もありますし、努力しなくても偶然にいい結果が出ることもあります。

 つまり、「正しい行動」をしても、「正しい結果」が出るとは限らないのです

 何についても言えることですが、良くも悪くも、結果は「偶然」に左右されます。その偶然に引き起こされた結果、「たまたまそうなった」という結果を、スミスは「不規則な結果」と呼びました。

 結果はもちろん大事です。しかし、いい結果が出たとしても、それが「偶然の結果」だったとしたら、ほめられたものではありません。目をつぶってバットを振ってホームランになったとしても、自分で「よし、オレはよくやった!」とは思えないはずです。

 反対に、狙い通り完璧なタイミングでボールを捉え、ホームランになりそうだった打球が、突風で押し戻されてセンターフライになってしまったらどうでしょう?

 たしかに結果としては「アウト」ですが、決して自分を責める必要はないと思います。「かなり高い確率でヒットになるはずだった」と語った、前回のイチロー選手のエピソードがいい例です。

 しかし、世間は「結果」を重視します。

 プロセスよりも、実際に起こった結果を重視し、結果に対して称賛・批難する傾向があるのです。そのため、いくら正しい行動をしても、正しい結果(称賛に値する結果)が出なければ、世間からの称賛は得られず、非難されてしまうのです。

 「世間がプロセスより結果を重視する」という理由は、2つあります。

 ひとつめの理由は、「周りの人びとには、プロセスが見えないから」です。みなさんがどれだけ準備してきたかは知りません。また、「かなり高い確率でヒットになるはずだった」かどうかも判断できません。だからプロセスを評価したくても、評価できないのです。これはある意味仕方がないことです。

 ふたつ目の理由は、「そうはいっても、結果が大事だから」です。

 わたしたちも「今まで頑張ってきたのだから、結果なんてどうでもいい」とは考えません。何かを目的にして行動したわけですから、その結果が実現できたのとできなかったのでは、当然評価が異なります。これも頷けます。だから、仮に周囲が今までの努力を知っていても「結果」を重視する傾向があるのです。

 つまり、わたしたち自身も含めて、社会はプロセスではなく、結果を重視して評価をするわけです。

 世間はプロセスよりも結果を重視する。わたしたち自身も、結果を重視する。では、結果さえよければ、あとはどうでもいいのかというと、そうではありません。

 なぜなら、プロセスを軽視していれば、いい結果が出づらくなるからです。いい結果を出し続けようとしたら、「偶然の幸運」に喜ぶのではなく、プロセス・準備も重要です。

 またスミスは、「適正な動機があって、適正に行動し、適正な結果がでたもの」が称賛に値するとしています。結果を出そうという意識があり、結果を出すために行動し、そして実際に結果が出たものだけを「称賛に値する」と考えたわけです。

 つまり、偶然の結果は褒められたものではなく、意図やその結果に至る行動も伴っていなければ「善」とはいえないと考えたのです。これは納得がいく指摘です。

 たとえば、自分が何も考えずに取った行動が、巡り巡って人の命を助けることになったとしても、「自分が助けてやった!」とは言えないはずです。「意図」がなかったからです。

 同様に、行動が伴っていなかった場合も称賛は得られません。さらには、「そのつもり」があって、「行動」したとしても、意図した結果が出なければ、称賛はされないでしょう。

 これを踏まえて、次の表を見てください。これは、自分の中に作った「裁判官」と、世間が、どのような評価を下すかを表しています。

 ここで問題になるのは、

「しっかり準備して、意図して行った行動が結果に結びつかなかった時」
「何も準備しなくて失敗して当然だったのに、たまたまいい結果が出てしまった時」

 です。

 この2つのパターンでは、「世間」「自分の中の裁判官」からの評価が異なります。両者から異なる評価を受けた時、どういう反応をするか、それが人によって異なります。そしてそれが「正しい人間」と「正しくない人間」を分けることになるのです。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら