ビッグデータ・アナリティクスの時代
2012年07月28日(土) 大元 隆志

進化する統計翻訳は「現代に蘇ったロゼッタストーン」だ

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古代エジプトの「神の文字」はなぜ解読できたのか

 その口からこぼれ落ちる言葉が秩序となり、混沌の中から宇宙を創造したと伝えられる、古代エジプトの創造神「トト」。

 古代エジプトから伝わる神話によると、神々の書記官でもあったトトは、ヒエログリフ(神聖文字)を開発し、人々に文明をもたらしたという。世界最古の文字の一つとされるヒエログリフは「メドゥ・ネチェル(神の言葉)」と呼ばれ、神の意志を伝える文字と考えられていた。

 ところが、戦争が度重なり、科学の発達によって信仰が遠ざかるとともに、この神の言葉を引き継ぐ者も歴史の舞台から姿を消していった。ヒエログリフを読める人間が地上から消滅したのである。石碑の装飾にも見える謎めいた記号の羅列だけを残して、神へと続く道しるべは永遠に失われたと考えられていた。

三種の言語が刻まれたロゼッタストーン〔PHOTO〕gettyimages

 この世界最古の文字を解読するきっかけを作ったのは、フランスの英雄ナポレオン・ボナパルトであった。1799年7月15日、ナポレオン率いるフランス軍は、エジプト遠征中に奇妙な石碑「ロゼッタストーン」を発見する。

 ロゼッタストーンには、ヒエログリフ、民衆文字(デモティック)、ギリシャ語(コイネー)という三種の言語が記されていた。戦争の絶えなかった時代、「言語」の異なる複数の国を制圧すると、それらの民に法制度などを伝えなければならず、同じ内容を複数の言語で訓示していたのである。

 ロゼッタストーンに書かれた三種の言葉が同一の内容を意味していることが明らかになると、ギリシャ語とデモティック文字を頼りに、ヒエログリフの読み方が判明した。一度は途絶えたと思われた神へと続く道が、後世に生きる人々の前に再び開かれたのである。

音声を複数の人の母国語に翻訳する画期的アプリ

 スマートフォンとクラウドが普及した現在、ハイテクを利用した「現代版ロゼッタストーン」とも呼べる試みが注目を集めている。世界23か国、26の研究機関によって運営されている「ユニバーサル音声翻訳先端研究コンソーシアム(U-STAR)」が開発した音声翻訳アプリ「VoiceTra4U-M」がそれだ。

 このVoiceTra4U-Mを活用することで、全世界の95%の人々のうち5人が同時に会話を行うことができる。この夏、世界中の人々が集うロンドンオリンピックで、VoiceTra4U-Mによる、言葉の壁を超えたコミュニケーションが期待されている。

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