ビッグデータ時代に求められる個人の『デジタル筋力』

 デジタル・トレンドに敏感な方であれば、特に昨年から今年にかけて「ビッグデータ(Big Data)」という言葉を耳にした記憶をお持ちかと思います。

 2012年7月に発売された良書『ビッグデータの衝撃 巨大なデータが戦略を決める』(城田真琴著、東洋経済新報社)によると、「ビッグデータ」を広義に以下のように定義しています。

  「ビッグデータとは3V(Volume(量)/ Variety(多様性)/ Velocity(速度)という3つの頭文字から)の面で管理が困難なデータ、および、それらを蓄積・処理・分析するための技術、さらに、それらのデータを分析し、有用な意味や洞察を引き出せる人材や組織を含む包括的な概念である」(p.27)

 詳しい解説はぜひ同書をご覧になることをお勧めしますが、欧米のメディアを見ていても、ビッグデータに関しての調査結果、著作、記事などが次々に出版され、関連カンファレンスやセミナーも頻繁に開催されています。今やビッグデータは、「バズワード」や「はやり言葉」を超えて、ビジネスや日々の生活に大きなインパクトを与えるトレンドだと言えるでしょう。

求められる個人の『デジタル筋力』

 多くのビッグデータに関する言及や記事などを見て、気になることが一つあります。あくまで印象論かもしれませんが、こうしたビッグデータのトレンドは、大量のデータを持つ大企業やIT系企業での活用に重きが置かれて議論されることが多いように思えるのです。

 もちろん行政サービス、そして防災、医療、教育分野などでの活用の可能性も話題になりつつありますが(2012年3月の拙稿もご参照下さい)、もう一歩踏み込んで、私は個人一人ひとりにとってのビッグデータ活用についても、今後広く議論されていくことが重要と考えます。

 例えば、私が今述べたような「『ビッグデータ(big data)』というキーワードが注目を集めている」ということを検証する一つの方法として、「Google Insight for Search」という無料のサービスを活用し、次のようなグラフを簡単に描くことができます。

 些細な例ではありますが、身の周りの何気ない事象や情報を検証したり、自分自身の趣味の活動、キャリア形成、そして人生設計を行ったりする際にも、すでにオンライン上に溢れている豊富なデータを分析、解析することで、意思決定の根拠やヒントを得ることが可能なのです。

 また私たちは、「将来のエネルギー供給について」や「消費税の導入について」など、一見答えが発見しにくそうな複雑な問題に直面しつつ生活をしています。日々接するメディアの報道や、与えられる「事実」「情報」の真偽を検証したり、未来の意思決定の根拠を求めたりする際、「ビッグデータ」的な考え方やデジタルツールの利活用が多いに役立つ場面が、これからどんどん増えてくるでしょう。

 アメリカのビジネス誌『ファスト・カンパニー』の以下のコラムは、このような「個人にとってのビッグデータ的専門知識やスキルを身につけること」の大切さを、強く感じさせるものでした。

●「Time To Build Your Big-Data Muscles(今こそ『ビッグデータ的筋肉』を鍛える時期)」 ファスト・カンパニー 2012年7月18日

 このコラムでは、近年世の中で生成されるデータの量が爆発的な増加を続けていることや、近い将来、データ分析の専門家としてのデータ・サイエンティストが不足すると予想される問題などを指摘しています。その上で、アメリカの3つの大学で行われている、ビッグデータ時代に求められる人材育成プログラムが紹介されています。

 具体的には、南カルフォルニア大学、イェール大学、ペンシルヴァニア大学のそれぞれのビジネススクールにおいて、数学やコンピュータサイエンスなどのデータ分析に必要な専門性と併せ、与えられた分析結果を踏まえて意思決定を行うビジネススキルの重要性が強調され、その様子が報告されているのです。

 また、ビジネススクールに通う時間や資金が限られている人向けに、データの分析やマネジメントに特化したオンライン教育ポータル「Dataversity」 や「Big Data University」も紹介されています。

 そこまで専門的な知識やスキルを今すぐには求めない人向けとして紹介されているのが、ブラッド・ピット主演で話題になったハリウッド映画「マネー・ボール」や、データをビジュアル化することで地球規模の人口増加問題について分かりやすく解説しているハンス・ロスリング氏のTEDでのプレゼンテーションなどです。

 ビッグデータが今後ますます注目されていく時代ではありますが、誰もがコンピュータサイエンスを学習し、専門的な「ビッグデータ的筋肉」が一般の生活者レベルまで浸透することは難しいでしょう。

 ただ、グーグルの検索サービスを効果的に活用して物事の真偽を検証する手がかりを得たり、無料で利用可能なデータ分析サービスを使って意思決定の材料を多く集めたりすることは、日常レベルでも求められるようになるでしょう。また、そうしたスキルを身につけるための学習の機会も、今後ますます重要になっていくと思います。

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