どんな"呟き"が飛び出すか---ロンドン五輪で注目が集まる選手たちのツィッター利用

〔PHOTO〕gettyimages

 現地時間の今月27日から開催されるロンドン・オリンピックでは、各種競技の経過や結果と共に、参加選手のツィッター利用に多大な関心が集まっている。国際オリンピック委員会(IOC)は今回のロンドン大会を史上初の「ソーシャルメディア・オリンピック」と位置付け、積極的にツィッターで発信するよう選手達に促している。

 大会期間中、優に1000人を超えるアスリートがツィッターで情報を発信し、世界中のファンがそれに応えることで、ロンドン大会のピークとなる男子100メートル走の決勝時には、1億個以上のツィートが飛び交うと見られている。

 オリンピック選手がツィッターを本格的に利用し始めたのは、2010年の冬季バンクーバー五輪と言われる。以来、各種競技のシーズン中、あるいはシーズン・オフを問わず、アスリート達が発する様々なツィートは、彼らのファンのみならず、一般大衆の関心を集めてきた。

 そこには選手の生の心情が吐露されたり、ライバル同士の嫉妬や中傷のコメントが行き交ったり、彼らしか知らないスポーツ界の実態や裏事情、あるいはスキャンダルなどが暴露される可能性があるからだ。実際、過去にはオーストラリアの女子競泳のトップ・アスリートが露出度の高い水着をつけた自身の写真を載せたり、他国の選手を中傷するなどのツィートが物議を醸したことがある。

メディアよりも選手自身がニュースを流す時代に

 つい先日も、元オリンピック選手が「2007年のシドニー・オリンピックでは7万個のコンドームが選手村で配布され、すぐに底をついた。五輪村はセックス天国」と米メディアに暴露し、大きな話題となった。しかも今回のロンドン五輪では、テレビや新聞に頼らずとも、アスリート自身がツィッターという情報発信の手段を有している。もっとも妙なことを呟けば自身の評判を落とすだけに、選手も迂闊(うかつ)な発言は控えるだろうが、少なくとも技術的には大会期間中にライブでこの種のスキャンダルが噴出する可能性はなきにしもあらずだ。

 こうした事態を未然に防ぐため、IOCではアスリート達にソーシャル・メディア・ハンドブックを配布し、表に出していい情報といけない情報の峻別を教育していると言われる。

 今回の五輪では、既に大会前からアスリート達は積極的にツィートしている。IOCのまとめによれば、今のところ選手たちのツィートの大半は「競技中に自分がどんなソックスをはいているか」とか「選手自身の今日の体調」「ファンへの感謝」など、当たり障りの無いものだ。

 しかし、いざ大会が開幕した後は、競技期間中にかかる精神的ストレスなどのせいで、どんな呟きがポロリと飛び出すやもしれない。またメダルが期待されるトップ・アスリートよりも、むしろ世間から注目されていない下位選手の方が、欲求不満のはけ口として、妙なことを呟く危険性も指摘されている。

 一方で、ツィッターを断固拒絶したトップ・アスリートもいる。前回の北京オリンピックの女子競泳・自由形400メートルと、800メートルで金メダルを獲得した英国のRebecca Adlington選手だ。彼女は今年5月の時点で早々と「ロンドン五輪期間中は、自分はツィートしないし、ファンのツィートも全くチェックするつもりはない」と宣言した。その理由は、一部の心無いファンの中傷によって集中力を失うのを避けるためだという(英Guardianに掲載された「London 2012 Olympics: Rebecca Adlington blocks Twitter for the Games」より)。

 同じ記事の中で彼女は「自分に対する中傷は、私の競技中のパフォーマンスよりも私の外見に関するものが多い。たとえ10本の好意的なツィートを読んだ後でも、その種の嫌なツィートを1本読んでしまうと、憂鬱になると共に怒りを抑えることができない」と述べている。

 これと同様の理由から、五輪期間中にツィッターをシャットアウトする選手は他にも存在すると思われる。上記Guardian記事の中でAdlington選手が見せた繊細さは、厳しい競技の世界では非凡さよりも、むしろ平凡さの証と見られることが多い。しかしオリンピック1大会で2個の金メダルをとるほどの選手がそれを見せたということは、どんな人間も所詮は傷つき易く、脆い生き物であることを示している。

 言うまでもなく勝敗の分かれ目は、そうした気持ちをどうコントロールするかであって、たとえばツィッターも使い方次第ではストレスを上手く発散させるツールになるかもしれない。この点からも、ロンドン五輪中の選手のツィッター利用は注目に値するだろう。

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